標準化とグローバル対応の 必要から新システム導入
株式会社島津製作所は先端産業分野における高度な製造装置や検査機器をはじめ、モノの成分や組成を知るための分析機器、X線TVシステムなどの医用機器、航空機関連機器の設計、製造を行う。つねに時代の先端を担う技術を開発し続ける同社では、20年以上前から生産管理や会計、人事など、全社的にあらゆる部分のシステム化が行われていた。だが、業務の拡大や変化に伴い、各システムに求められる機能も大きく変わる。「海外における販売・生産が増え、グローバル対応のシステムが求められるようになったのです。また、これまで状況に応じて必要な機能を追加してきましたが、その結果、システム自体が複雑化、煩雑化してしまっていました。そのため、システム全体を把握している人間が少なく、彼らが退職した後の運用に不安を感じてもいました」
そう語るのは同社業務システム統括部情報システム部部長 永野 克己氏だ。こうした状況を受け、同社では全社的なシステムのリプレースを決定した。
そんななか、半導体機器事業部ではその導入に戸惑いを感じていた。個別受注生産を行っている同事業部では、仕様が確定した製品向けのERPシステムが業務にマッチしないからだ。
同じ製品を多数製造する大量生産と異なり、開発要素があり、顧客からの注文に応じて少ロットの製品を設計、製造する。製造段階での急な仕様変更も多く、そのたびに使用する部品なども変わるという複雑さを抱えている。見込み生産などを前提としたERPシステムでは、こうした突発的な事態に対応しきれないため、原価管理などが難しい。
そこで半導体機器事業部では、業務にフィットした別システムの選定に入った。事業部の“モノづくり”の体制そのものを見直し、個別受注生産をいかに効率化していくかを議論し、対応できるシステムを選んだという。

耐摩耗性に優れた超硬膜を付ける複合成膜装置。
採用の決め手は機能性と カスタマイズへの柔軟な対応
そして、数社のベンダーからの提案を検討した結果、DAiKOの個別受注向け生産管理システム 「rBOM」の採用が決定した。
「採用の決め手は、急な仕様変更への迅速な対応を実現したいという弊社の意向にマッチしていたからです」
そう語るのは業務システム統括部情報システム部システム企画グループ主任 稲垣 宏成氏だ。
また、社内の別システム「Oracle EBS」とのデータ連携が図れること、システムのカスタマイズにも柔軟に対応 できること、導入コストが他社に比べかなり抑えられることもポイントとなった。
しかし、導入準備にあたっては、その「Oracle EBS」とのデータ連携に苦労したという。
「稼働直前までDAiKOのSEが作業し、バグの修正などを確実に行ってくれました。また、社内で研修を行い、稼働前までに最低限の操作を現場のスタッフがマスターできるよう努めました」
研修開始当初、現場スタッフのシステムに対する理解度には大きな差があり、混乱なく稼働できるのか、不安があったという。
しかし、システムに関する知識が豊富なスタッフが自発的に教育係となり、自然に使い方も浸透していった。
そうして2011年1月、ついに「r BOM」は本格的な稼働を開始。事前準備が功を奏し、導入時に大きなトラブルもなく、スムーズなスタートとなった。

「rBOM」と全社システムとの融合により、開発要素を含む個別受注生産に対応できるようになった。2つのシステムのデータを同時に確認できる。
業務効率向上と 部門間の連携を実現
稼働から半年、半導体機器事業部ではどのような変化があったのだろうか。同事業部製造部生産グループ課長 小西 康雄氏と、同生産管理グループ課長 西村 成生氏に話を聞いた。
以前のシステムでは、部品の調達については設計を担当する技術部が製造部に手配を要請し、製造部が図面と照らし合わせながら外部への発注を行っていた。しかし、「rBOM」では技術部で作成した部品表をリアルタイムで製造部が確認し、そのまま発注を行うことが可能だ。
「紙による手配指示を減らすことにより業務効率がアップしただけでなく、別の部品を発注してしまうというミスも防げるようになりました」(小西課長)
もちろん仕様変更にもスピーディに対応でき、新たな部品手配までのスピード化を実現。顧客満足度向上に寄与している。しかし効果はそれだけではない。
「技術部と製造部で同じデータを共有し、業務にあたるようになったことで、部門間の連携力がアップしました」(西村課長)
同じデータを共有することで、作業の進捗状況などが可視化され、製造業にありがちな部門間の壁を取り払うことにも一役買っているという。
同社では今後「rBOM」をさらに活用していきたいと考えている。「『rBOM』によるリアルタイムでの部品データの活用を進め、目標原価と実原価の比較など、きめ細かな原価管理も行いたいと考えています。また、データの連携により各製造ラインへの部品支給の効率化を実現し、物流面でもコスト削減やスピード化を図りたいですね」(西村課長)
システムを活用した、同社の効率化への挑戦はこれからも続いていく。