間接費とは、企業が製品・サービスを作るにあたって必要なコストの一部です。無駄を削減することで、利益率を向上させられます。一方で、間接費に該当するコストの種類や、直接費との違いを正しく理解している方は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では、間接費の具体例や直接費との違いを解説します。また、間接費を削減するメリットや手順、ポイントについてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
間接費の種類と具体例
間接費とは、製品やサービスを作るときに発生する間接的なコストです。複数の製品やサービスにまたがって発生し、事業運営に必要な経費であると言えます。間接費の種類は3つです。
- 間接材料費
- 間接労務費
- 間接経費
1.間接材料費
間接材料費は、製品やサービスの直接的な材料ではないものの、製造過程で必要となる間接的な材料費のことを指します。間接材料費の具体例はこちらです。
勘定科目 | 具体例 |
補助材料費 | 製品の梱包に使う段ボールや緩衝材など |
工場消耗品費 | 工場やオフィスを掃除する掃除機やモップ、クリーナーなど |
消耗工具器具備品費 | 製造ラインのドライバーやレンチなど |
間接材料費は、大きく3つの勘定科目に分けられます。どれも企業の生産活動を支える重要なコストです。
2.間接労務費
間接労務費は、製品の製造やサービスの提供に直接的に関わらない従業員の人件費のことを指します。間接労務費の具体例はこちらです。
- 管理職の賃金
- メンテナンススタッフの賃金
- 経理・人事部スタッフの賃金
間接労務費は、企業の継続的な運営を支えるために必要な経費です。直接製造に関わらない従業員の給与や賞与をはじめ、福利厚生費も含まれています。
3.間接経費
間接経費は、製品やサービスを作るときに発生する間接的な経費です。間接経費の具体例はこちらです。
- 水道光熱費
- 通信費
- 整備や施設の減価償却費
工場やオフィスで使用される電気やガス、水道の費用は、製品の製造やサービスの提供に直接関与しませんが、業務の遂行に欠かせません。
また、会社運営には電話代やインターネット代も必要です。さらに、長期で使用される生産設備や事務機器などについても、減価償却費として間接経費に該当します。
間接費と直接費の違い
直接費とは、製品やサービスの提供に直接関わるコストのことです。間接費と直接費には、大きく分けて4つの違いがあります。
- 発生するタイミング
- 頻度
- 費用感
- 配賦処理
企業の健全な財務管理やコスト意識の向上のためには、両者の違いを正しく区別・管理することが重要です。
発生するタイミングと頻度、費用感
間接費と直接費は、発生するタイミングや頻度、費用感に違いがあります。
間接費 | 直接費 | |
発生するタイミング | 企業運営中は随時 | 製品やサービスを生産したとき |
頻度 | 不規則(定期+不定期)・多い | 規則的・少ない |
費用感 | 少額 | 高額 |
間接費は随時発生しています。タイミングや頻度は、間接費の種類によって、定期的なものと不定期なものの2つに分けることが可能です。複数の製品やサービスにわたって共有されるため、管理が難しい場合があります。
一方、直接費は製造量やサービス供給量に比例して発生することが一般的です。そのため、コストの予測が立てやすいという特徴があります。
コスト計算に必要な配賦処理
間接費は、コスト計算に必要な配賦処理が必要です。一方で、直接費は配賦処理が必要ない点に違いがあります。
配賦処理とは、会社やサービス全体で発生したコストを、各製品やサービスに適切に分配する処理のことです。
複数の製品やサービスにわたって発生する間接費は、製造時間や従業員の労働時間、使用されたリソースの割合などの基準を設定して、適切な配賦処理が求められます。
製品やサービスごとに発生する直接費は、特定の製品やサービスに対して計上できるため、コスト管理がシンプルです。
間接費を削減するメリット
間接費を削減するメリットは4つです。
- 営業利益率が向上する
- キャッシュフローが改善される
- 財務健全性が増して信頼感が高まる
- 直接費の削減よりも難易度が低い
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1.営業利益率が向上する
間接費は売上原価として配賦できるものと、共通経費として処理するものがあります。前者は粗利率の改善、後者は営業利益率の向上につながります。
例えば、オフィス業務に必要な事務用品の一括購入については、共通経費であり、販売費および一般管理費の削減となり、営業利益率の向上につながります。
2.キャッシュフローが改善される
間接費の削減は、キャッシュフローの改善に直結します。間接費は、定期的かつ継続的に発生するものも多い費用のため、直接費に比べて少額ですが、積み重なると決して無視できない金額になります。
これらを抑えることで、毎月会社の手元に残る現金が増えます。キャッシュフローが改善されると、新しい設備投資や事業拡大に向けた準備を進めることも可能です。
3.財務健全性が増して信頼感が高まる
間接費を削減することで企業の財務健全性が高まり、外部からの信頼感が増します。間接費のコントロールが不十分な会社は、無駄な支出が多く、経営の効率が悪いと評価されるのが一般的です。
一方で、間接費を適切に管理・削減していると「この会社は効率的な経営を実践している」など好印象を与えられます。特に、金融機関や投資家に財務健全性の高さを評価されると、有利な条件で資金を調達できる可能性が高まります。
4.直接費の削減よりも難易度が低い
直接費の削減は、製品やサービスの品質に影響を与えるリスクがあるため、慎重な決断が大切です。しかし、間接費の削減は、製品やサービス内容に直接関わらない部分のコストカットであるため、品質低下のリスクは比較的低いと言えます。
例えば、オフィスの光熱費や通信費の契約プランを見直すことで、従業員の満足度を下げないコストカットが実現できる可能性があります。費用の削減で重要なのは、顧客満足度を下げないこと、商品の品質を落とさないこと、従業員のモチベーションを維持することの3つです。
間接費を削減するポイントと手順
間接費の削減は、以下の4ステップで行いましょう。
- 現在の間接費を可視化する
- 削減目標(KPI)を設定する
- 種類ごとに施策を実施する
- PDCAサイクルを回し続ける
ここからは、それぞれのステップごとにポイントを解説します。
手順1.現在の間接費を可視化する
間接費を削減するためには、どの項目にどれだけの費用がかかっているか可視化し、現在の間接費を正確に把握することが必要です。
例えば、光熱費、通信費、事務用品費など、勘定科目ごとに金額を年間ベース、または月間ベースで集計します。
ここで、どの項目に無駄があるかを明確にしておけば、重点的に見直すポイントを絞ることが可能です。間接費削減のための方向性を決める大切なステップと言えます。
手順2.削減目標(KPI)を設定する
重点的に見直す間接費の項目を決定したら、次に削減目標(KPI)を設定しましょう。KPIとは、「重要業績評価指標」とも呼ばれ、削減の進捗状況を数値的に評価するときに役立ちます。
例えば「オフィスの事務用品にかかるコストを年間で5%減らす」など、具体的な削減の範囲と数値を示すことが重要です。
ただし、あまりに実現可能性が低い目標を設定してしまうと、従業員のモチベーション低下や業務効率の悪化が懸念されます。目標を決めるときは、全体のバランスを考えて無理のない範囲で設定しましょう。
手順3.種類ごとに施策を実施する
削減目標(KPI)を設定したら、次に具体的な施策を実施します。アプローチの仕方は、大きく分けて2つあります。
- サプライヤーマネジメント
- ユーザーマネジメント
例えば、光熱費や通信費の見直しをするときは、供給先との契約を見直すサプライヤーマネジメントが有効です。また、消耗品費の削減を目指すときは、ユーザーマネジメントも必要となります。
ユーザーマネジメントとは、調達者自身が商品やサービスの必要性や費用対効果を認識し、調達量や要求しているサービスレベルなどを見直す手法です。間接費の種類に応じて適切な対策を講じることが、成功への近道と言えます。
手順4.PDCAサイクルを回し続ける
多くの場合、間接費は一度の削減施策では完結しません。継続的にPDCAサイクルを回し、さらなる改善を続けることが重要です。
例えば、在庫管理システムを導入して過剰在庫を抑えられた場合、その効果を測定してさらに改善できる点がないかをチェックします。また、他の部署でも類似のシステムが導入できるのであれば、展開を検討することも有効です。
計画と実践を繰り返すことで、間接費削減の効果に持続性を持たせられます。無駄のない経営を意識して、企業の競争力を高めましょう。
まずは間接材料費の見直しがおすすめ
間接費を削減するなら、まずは間接材料費の見直しが有効です。理由は、人件費などの間接労務費や、光熱費などの間接経費は削減しづらく、施策を講じても効果が現れるまでに時間がかかることが多いためです。
例えば、消耗品のまとめ買いや不要な物品購入の取りやめなど、間接材料費の削減策には比較的短期で効果が現れやすいものもあります。また、請求書や領収書をクラウド上で管理したり、電子化を進めることによって紙代などが不要になれば、間接材料費を大幅に削減することも可能です。
「手書き書類やFAXをやめて、コスト削減と同時にペーパーレス化を進めたい」とお考えの方は、購買管理システムの導入も検討しましょう。
購買管理システムを活用しよう!
先ほどご紹介した消耗品のまとめ買いに加え、不要な物品購入の取りやめや、人件費の中でもBPOについての外注費などは、購買管理システムの導入によって見直しに取り組むことができ、効果が実感しやすい対象です。
当社が提供する購買管理システムのPROCURESUITE(プロキュアスイート)は、見積から検収までの一連の購買プロセスを一元化できるツールです。
また、カタログサイトとの連携により、間接材料費のコストを大幅に削減できます。詳細情報はこちらからご確認ください。