生産管理を効率的に行うことは企業の利益に直結します。しかし、いきなり高額な生産管理システムを入れて、もし失敗したらどうしようと悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。
この記事ではエクセルを使った生産管理のやり方について詳しく解説します。効率的なシステムの構築法や運用のコツなどについても触れます。
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エクセルを活用した生産管理の基礎
エクセルを使って生産管理を行うとはどういうことか、まだよくわかっていない方は多いと思います。ここでは、エクセルを活用した生産管理の基礎について、詳しく解説します。
エクセルで生産管理を始める前に理解すべきこと
エクセルを生産管理に活用する前に、いくつかの重要なポイントを理解しておくことが重要です。
まず第一に、エクセルは多機能で柔軟性がありますが、そのすべての機能が生産管理のニーズに最適というわけではありません。生産管理では、データの正確性とアクセスの容易さが求められますが、エクセルはそのデータの量が増えるにつれて、管理が煩雑になる場合があります。
また、エクセルのファイルはバージョンによっては互換性に問題を抱えることがあります。チーム内でファイルを共有する場合は、全員が同じバージョンのエクセルを使用しているか確認しましょう。
さらに、重要なデータのバックアップは定期的に行い、データ損失のリスクを最小限に抑えるべきです。生産管理をエクセルで行う際には、データの見える化も重要です。
エクセルは強力なデータ可視化ツールを備えており、グラフやチャートを利用して、生産状況を直感的に把握できます。迅速な意思決定が促され、プロセスの効率化が図れます。
エクセルでの生産管理は、適切な準備と理解をもって取り組めば、非常に有効な手段です。
以上のポイントを踏まえ、計画的に導入してください。
専用テンプレートの活用
エクセルには生産管理に適した専用テンプレートがあり、計画やスケジューリングの作業がしやすくなります。提供されている豊富なテンプレートを用いると、はじめから表を作成する手間が省け、時間と労力を削減できます。
テンプレートは、必要なデータを入力するだけで自動的に計算を行い、視覚的にもわかりやすいレイアウトで情報を表示してくれるためです。
また、エクセルのテンプレートはカスタマイズが可能であるため、特定の生産プロセスや要件に合わせた調整が容易です。企業の具体的な要求に応じた生産計画がスムーズに行えます。
関数の活用
エクセルにはデータの自動計算を可能にする多くの関数が備わっており、活用すると計算ミスを減らし、作業の効率化が図れます。具体的な関数の活用例は以下の通りです。
- SUM関数:複数の数値を指定して合計値を求めるのに使用すると、手動での合計計算の手間が省ける。
- AVERAGE関数:指定した数値の平均値を計算し、データの傾向を素早く把握するのに役立つ。
- WORKDAY関数:週末や指定した休日を除外した期間内の実働日数を求めることができる。プロジェクトのスケジュール管理や期限内でのタスク完了の見積もりに非常に有効。
- SUMIF関数:特定の条件を満たすセルの値を合計することが可能で、条件に応じたデータの集計が必要な場合に重宝する。
- COUNTIF関数:特定の条件を満たすセルの数を確認できる。特定の範囲内で特定の値以上のデータ件数を知りたい場合などに便利。
- VLOOKUP関数:表から特定のデータを素早く見つけ出すために使用され、データベースから必要な情報を引き出す際に効率的。
- IF関数:条件に基づいて異なる値を返すことができるため、特定の条件下でのデータ処理を自動化するのに役立つ
エクセルで生産管理をする際は以上を使うと便利なので、うまく活用し、業務を効率化しましょう。
プロセスの可視化
エクセルでガントチャートなどを作成して生産プロセスを可視化すると、チーム全体で情報を共有しやすくなります。プロジェクト全体の進行を把握できるため、遅れが発生したときにすぐに対応でき、納期に遅れずに商品を納品できます。
また生産プロセスが見えると、適切な人材配置も可能です。各作業に最適な人を配置しやすくなり、生産効率が上がります。
エクセルでの生産管理のポイント
生産管理をエクセルで行う際のポイントについて説明します。
生産管理表を作成する手順
生産管理表をエクセルで作成する際は、初めてでも簡単に取り組めるよう、インターネット上で提供されているテンプレートの利用がおすすめです。
テンプレートの利用で、基本的な生産管理表を効率的に作成できます。
まずは、エクセルのシートに必要な情報をリストアップします。ここで重要なのは、各工程の作業内容を具体的に洗い出すことです。
テンプレートを使用すれば、情報を入力するだけで自動的に表が形成されますが、その前にどの情報が必要かを明確にしなければなりません。
特に重要なのは、各工程の担当者の名前、作業の開始日、終了日の設定です。プロジェクト管理を円滑に進める上で重要な要素であり、責任の所在を明確にし、プロジェクトの進行状況を追跡しやすくします。
また、工程の設定時には担当者が変わるタイミングや作業の期間設定に注意を払いましょう。不測の事態に対応できるよう、スケジュールには余裕を持たせてください。
生産管理表の基本項目を網羅すれば、エクセルを用いて効果的な生産管理システムを自ら作り上げられるはずです。生産管理表に含めるべき具体的な基本項目は、次の通りです。
項目名 |
説明 |
工程名 |
各工程の名称 |
担当者 |
各工程の責任者名 |
作業内容 |
工程ごとの具体的な作業内容 |
開始日 |
作業開始予定日 |
終了日 |
作業終了予定日 |
期間 |
各工程の所要時間 |
状況 |
現在の進行状況 |
備考 |
特記事項や不測の事態に対するメモなど |
工程管理とガントチャート
工程管理において、ガントチャートは作業の進捗状況を視覚的に把握するための強力なツールです。
ガントチャートは、縦軸にプロジェクトの各工程を細分化してリストアップし、横軸には工程が行われる期間を表示します。二つの軸を組み合わせると、プロジェクト全体のタイムラインと各活動の進捗を一目で確認できます。
エクセルの描画機能を利用すれば、ガントチャートを効果的に作成可能です。具体的には、エクセルのバーグラフ機能を使って、各工程の開始日と終了日をバーで示し、プロジェクトの進捗を視覚的に表現します。
進捗状況の更新が必要になった場合にも、データを編集するだけで簡単にチャートを更新できます。
ガントチャートの大きなメリットは、プロジェクトの進捗管理だけでなく、リソースの配分や期限内でのタスクの完了を計画する上での明確なガイドラインを作れる点です。
また、プロジェクトに関わる全員がチャートを見ると、各自の責任範囲と期待される納期が明確になり、コミュニケーションの向上にもつながります。
さらに、ガントチャートは潜在的な衝突や遅延を早期に特定し、対処するための計画を立てる際にも有効です。例えば、複数のタスクが同時にスケジュールされている場合、リソースの過剰使用を避けるための調整が必要になることが可視化されます。
マクロで自動化
エクセルのマクロ機能やVBA(Visual Basic for Applications)を利用すると、データ処理や関数実行を自動化できます。繰り返し行う作業を簡略化し、時間を節約すると同時に人為的なエラーを減らせるのです。
例えば、入庫や出庫のデータを表に入力する際、マクロを設定しておけば、記入日時や在庫数、在庫の状況などの関連データが自動で更新されます。マクロによってデータ入力にかかる労力が大幅に軽減され、作業効率の向上が可能です。
マクロを設定するには、まずエクセルの「デベロッパー」タブから「マクロの記録」を開始し、行いたい操作を実行します。
エクセルは行った操作をVBAコードとして記録し、後からこのマクロを再実行すると同じ操作を自動で行えます。また、より複雑な操作や特定の条件下での動作が必要な場合には、VBAエディタを使用してスクリプトを直接編集することも可能です。
設定されたマクロは、特定の条件を満たすと自動的に実行されるため、日常的なデータ更新作業を効率的に行えるため、結果として業務の速度と精度が向上します。また、マクロを利用すると、一連の作業をボタン一つで完了できるため、操作の簡略化が図れ、作業者の負担も軽減されます。
エクセルで生産管理を行うメリット
生産管理をエクセルで行うメリットについて、主なものを4つ紹介します。
コスト削減
多くのオフィス環境において、エクセルは広く普及しており、追加のライセンス費用が発生しません。対して、専用の生産管理システムを新たに導入する場合、ライセンス料や初期導入にかかるコストが必要です。
つまり、エクセルを活用すれば、追加費用を削減し、経済的な負担を軽減できます。
エクセルは世界中で広く利用されている一般的なオフィスソフトウェアであり、多くの従業員が基本的な操作スキルをすでに持っています。
このため、新たなシステムを導入する際に必要となるトレーニング期間やコストも、エクセルを使用すると大幅に削減できます。従業員は比較的、短期間でエクセルの操作に慣れるため、生産管理システムの代用として活用がスムーズに行えます。
既存のオフィス環境に容易に統合できるため、業務の連続性を保ちつつ、新しいシステムへの移行コストや時間の節約が可能です。
効率化の実現
Visual Basic for Applications(VBA)を用いたマクロプログラミングは、エクセルで業務効率化を大幅に推進する強力なツールです。VBAマクロを利用すると、エクセル内での繰り返し作業や複雑なデータ処理を自動化できます。
時間がかかっていた作業を高速で処理できるようになり、生産管理の効率が向上します。例えば、在庫管理、注文処理、生産スケジューリングなど、日々の更新作業をマクロで自動化することが可能です。
エクセルでプログラムを作成するもう一つのメリットは、カスタマイズの自由度が高い点です。企業ごとの特定のニーズに応じたカスタム機能を追加でき、既存のビジネスプロセスに合わせて生産管理システムを柔軟に構築できます。
また、VBAを使用すると、エクセルの基本的な機能では対応できないような複雑な計算や条件分岐もプログラムでき、より精密なデータ分析やリポート生成が行えます。エクセルは利用できる人材が多いため、社内での共有や他の部門への展開が容易です。
生産管理データをエクセルで管理すると、情報のアクセシビリティが向上し、多くのスタッフがデータを簡単に閲覧・編集できます。エクセルを用いた生産管理は、コストを抑えつつも、業務の質を向上させる効果的な手段として、多くのビジネスシーンで活用されています。
導入のしやすさ
エクセルの操作は、すでに慣れている従業員が多いため、新たなシステムに対する抵抗感が少なく、実践的な使用がすぐに始められます。新しい生産管理システムを導入の場合、通常は専門的なトレーニングが必要とされます。
しかし、エクセルは多くの従業員が基本的な機能をすでに理解しており、高度なトレーニングの必要性を大幅に低減できます。エクセルを生産管理ツールとして使用する際の教育は、主に既存の知識を応用して特定のテンプレートやマクロの使い方を学ぶ程度で済みます。
従業員は新たなスキルを一から学ぶストレスを感じることなく、今の自分のスキルを活用して生産管理の効率化に取り組めます。エクセルはカスタマイズが可能なため、企業の具体的なニーズに応じて生産管理プロセスを細かく調整可能です。
従業員にとっても理解しやすく、自分たちの実務に即した形でシステムを運用できるため、より一層の効率化を実現します。
他システムとの連携の可能性
エクセルはその柔軟性により、さまざまなデータ形式との連携が可能なツールです。データベース、CSVファイル、テキストファイル、さらにはWebサービスからデータをインポートする機能を持っているため、異なるデータソースからの情報を一元化して容易に管理可能です。
エクセルのデータを他のフォーマットにエクスポートできるため、他のシステムやアプリケーションとのデータ共有がスムーズに行えます。データ連携の容易さは、生産管理において非常に重要な役割を果たします。
生産ラインの効率を監視し、品質管理のためのデータを整理する際、エクセルが非常に便利です。異なる部門や外部のサプライヤから提供される情報を集め、それらをエクセルで一元的に処理・分析できます。データの分析結果から解決すべき課題を見つけ、必要な改善策を迅速に導き出すことが可能です。
企業は生産活動の透明性を高め、リアルタイムでの意思決定をサポートする詳細なリポートの生成が可能です。
エクセルは多くの業界標準のツールやプラットフォームとの連携が容易であるため、他のビジネスアプリケーションとの統合も簡単です。生産管理だけでなく、販売、在庫、財務管理など、企業の他の業務プロセスにもスムーズに接続し、全体の業務効率を向上させます。
エクセルで生産管理を行うデメリット
エクセルでの生産管理はメリットばかりではありません。
デメリットも考慮して取り組まないと、うまくいかない可能性が高くなってしまいます。ここでは、生産管理をエクセルで行うデメリットについて解説します。
機能の限界
エクセルは多くの企業で使われている便利なツールですが、生産管理を行う上での機能的な限界には注意が必要です。特に、バージョン管理のしづらさやファイルの属人化は、生産管理の効率と正確性を大きく損ねる要因です。
バージョン管理の問題は、複数のユーザーが異なる名前でファイルを保存することに起因します。どのファイルが最新であるか、またどのファイルが正しいデータを含んでいるかを判断するのが難しくなるのです。
ファイルの更新が適切に行われていない場合、古い情報で決定が行われるリスクがあり、生産プロセスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。
また、エクセルでマクロを使用して特定の機能を実装した場合、そのマクロを作成した人がいないと、データの修正やアップデートが非常に困難になる場合があります。知識が限られた人に依存することで、その人が不在の場合には作業が停滞するか、エラーの修正ができない状況に陥ってしまいます。
データ量が多い場合の処理速度と安定性
大量のデータを扱う際にはエクセルの処理速度が著しく低下する可能性があります。データが多くなるほど、ファイルを開くのが遅くなり、作業の効率が低下します。ファイルサイズが大きくなるほど性能の問題が顕著になるため、大規模な生産管理には向いていません。
VBAの使用においても、バージョン間で互換性の問題が発生する可能性があり、システムの更新ごとに修正が必要となる場合があります。保守作業の手間が増大し、それに伴うコストも増加します。
同時編集とリアルタイム更新の難しさ
エクセルには同時編集の機能が限定されており、一人がファイルを開いている間は他の人が同じファイルを編集することができません。複数人でのデータ更新や進捗管理が困難となり、生産管理の効率が低下します。
また、エクセルではファイルの履歴管理が不十分であり、以前のバージョンに簡単に戻れないため、操作ミスやデータの損失が生じた際に復旧するのが困難です。万が一のデータ喪失時に重大な問題を引き起こしてしまいます。
※BOXやMicrosoft365など、オンライン上で共有できる仕組みを利用すれば、一定条件の下で同時編集が可能です。
エクセルで生産管理を効率化しよう
生産管理システムを導入することで、データベースが構築可能です。基礎データがしっかりしていると、付帯業務にそのデータを活用できます。エクセルはそのような付帯業務に使うべきで、根幹のデータベースは整合性が取れ、安全性の高いものを使いましょう。
エクセル管理のメリットを実現しつつ、エクセルのデメリットも補えるシステムとしてrBOMがあります。
大興電子通信が提供するrBOMは、単なる工程管理にとどまらず、生産管理、購買管理、在庫管理まで幅広くカバーし、シームレスな連携を可能にします。部品表に基づき、個々の部品や製品に対して具体的な製造工程を追加し、工程ごとに納期情報を設定できるため、プロジェクトの進捗が一目でわかります。
納期管理にはガントチャートを利用でき、すでにガントチャートを使用していた方でもすぐに適応できる設計です。全体の負荷を簡単に把握できるため、管理がずっと楽になります。
これまで紙やエクセルで生産管理を行っていた企業、社内システムのカスタマイズによる属人化に悩んでいる企業、またはより価値ある業務に人材を専念させたいと考えている企業にとって、rBOMは理想的なソリューションです。