現在、多くの業界で人手不足が深刻な問題となっています。製造業においても、人手不足によって競争力やお客さま満足度が低下する課題を解消しなければなりません。企業の利益を向上させるためにも、人手不足を解消するための打開策が必要です。
本記事では、製造業の人手不足を解消するためにDX(デジタルトランスフォーメーション)を用いた具体的な打開策を詳しく解説します。製造業が人手不足に陥る原因と、伴って生じる影響も併せて解説するため、ぜひ最後までご覧ください。
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製造業における人手不足の実態
製造業では、人手不足が続いており人材確保が難しい状況が続いています。まずは有効求人倍率と労働人口の推移を確認して、人手不足の実態を把握しましょう。
有効求人倍率は1.74倍
厚生労働省が実施した「一般職業紹介状況」調査によると、令和5年度における製造業の有効求人倍率は1.74倍でした。
なお具体的な職種としては、生産ラインなどで製造業に従事する「生産工程従事者」の有効求人倍率が1.74倍であり、求職者1人に対して1件以上の求人がある状況です。
その他の、製造業に関わる職種の有効求人倍率は次のとおりでした。
職種 |
有効求人倍率 |
製造技術者(開発) |
2.11倍 |
製造技術者(開発を除く) |
0.80倍 |
生産設備制御・監視従事者(金属製品) |
1.21倍 |
生産設備制御・監視従事者(金属製品を除く) |
2.11倍 |
機械組立設備制御・監視従事者 |
0.83倍 |
製品製造・加工処理従事者(金属製品を除く) |
2.40倍 |
製品製造・加工処理従事者(金属製品を除く) |
1.99倍 |
機械組立従事者 |
0.80倍 |
機械整備・修理従事者 |
4.39倍 |
製品検査従事者(金属製品) |
1.27倍 |
製品検査従事者(金属製品を除く) |
2.01倍 |
機械検査従事者 |
1.23倍 |
生産関連・生産類似作業従事者 |
0.92倍 |
引用元:一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)について|厚生労働省
上記のように製造業の職種によっては、有効求人倍率が2倍を超えるケースもあります。全職業の有効求人倍率は1.21倍が平均なため、製造業は人手不足の状態であることがわかります。
各業界で労働人口が減少している
製造業だけでなく、日本全体で少子高齢化による労働人口の減少化が課題となっています。「国立社会保障・人口問題研究所」が公表する「2024年版人口統計資料集」によると、年齢別の人口は次のように変化する見込みです。
年次 |
人口(1,000人) |
||
0~14歳の人口 |
15~64歳の人口 |
65歳以上の人口 |
|
2020年 |
15,032 |
75,088 |
36,027 |
2025年 |
13,633 |
73,101 |
36,529 |
2030年 |
12,397 |
70,757 |
36,962 |
2035年 |
11,691 |
67,216 |
37,732 |
2040年 |
11,419 |
62,133 |
39,285 |
2045年 |
11,027 |
58,323 |
39,451 |
2050年 |
10,406 |
55,402 |
38,878 |
2055年 |
9,659 |
53,070 |
37,779 |
2060年 |
8,930 |
50,781 |
36,437 |
2065年 |
8,360 |
48,093 |
35,134 |
2070年 |
7,975 |
45,350 |
33,671 |
引用元:「2024年版人口統計資料集」表2-7年齢(3区分)別人口および増加率の将来推計:2020~70年|国立社会保障・人口問題研究所
労働人口である15~64歳の人口は2020年で約7,509万人ですが、2040年には約6,213万人、2050年には約5,540万人、2070年には約4,535万人と減少していく見込みです。
同調査によると、1920〜2020年までに国内の労働力は次のように変化しました。
年次 |
労働力総数(1,000人) |
労働力の割合(%) |
1920年 |
25,866 |
72.8 |
1940年 |
32,661 |
71.1 |
1960年 |
44,384 |
67.4 |
1980年 |
57,231 |
64.0 |
1990年 |
63,595 |
63.1 |
2000年 |
66,098 |
61.1 |
2010年 |
63,699 |
57.8 |
2020年 |
68,121 |
62.9 |
2022年 |
69,020 |
62.5 |
引用元:「2024年版人口統計資料集」表8-1性,労働力状態別人口および割合:1920~2022年|国立社会保障・人口問題研究所
1920年には人口のうち72.8%が労働力でしたが、2022年には62.5%まで労働力が減少しました。製造業だけでなく日本国内全体で、労働力が減少しているため、業界を問わず人手不足に悩まされています。
今後も労働力は減少していく見込みなため、優秀な人材を確保する採用力と定着率を向上させる施策が求められます。
日本全国で人手不足に陥っている原因
日本では全国的に人手不足に陥っており、人材獲得や生産性の向上が課題となっています。人手不足の原因としては以下2点が挙げられます。
- 少子高齢化に伴う労働人口減少
- 人材の流動化が主流となった
少子高齢化に伴う労働人口減少
現在は少子高齢化に伴う労働人口減少の影響で、日本全国で人手不足が課題となっています。労働力となる若年層・労働年齢層が減少しているため、採用難が続いているのです。
また高齢者が増えているため、シニア採用を取り入れている企業も多いですが、組織の次世代を担う若手層の獲得が難航しています。
「2022年版 ものづくり白書」によれば、2002年から2021年にかけて製造業で就業する人材の推移は次のように変化しました。
年次 |
若年就業者(34歳以下)数 |
高齢就業者(65歳以上)数 |
2002年 |
384万人 |
58万人 |
2021年 |
263万人 |
91万人 |
参照元:2022年版 ものづくり白書|経済産業省・厚生労働省・文部科学省
製造業における若年就業者数は、約20年間で121万人減少し、高齢就業者は33万人増加しています。高齢就業者だけでなく若年就業者を獲得しなければ、組織を長期的に成長させられません。
人材の流動化が主流となった
従来の終身雇用は崩壊しつつあり、現在では転職が当たり前になりました。そのため人材の流動化が加速し、ひとつの企業に長く就業しない人材が増えています。
さらにダイバーシティが拡大している現在では、フリーランスや在宅ワークなどの働き方が多様化し、企業に生涯を捧げるのではなくライフワークバランスを重視する労働者も増えました。
人手不足を解消するためには、長く働きたくなる魅力的な組織づくりと働きやすい職場体制を整えることが大切です。
製造業が人手不足に陥ることで生じる影響
製造業が人手不足に陥ることで生じる影響は、次のとおりです。
- 競争力が低下する
- 従業員の負担が増加する
- お客さま満足度が低下する
人手不足によって生じる影響を確認して、対策を講じるべきか検討しましょう。
競争力が低下する
人手不足に陥ることで、企業の競争力が低下します。人手不足によって生産性が低下すると、十分な品質を担保した製品を製造できず、生産ラインの縮小化や生産量減少につながるリスクがあります。品質が低下し生産量が減少すれば、競合他社に市場シェアを奪われてしまいかねません。
また、新人作業員に対して十分な教育をする時間と労力を確保できなければ、組織内のスキル・ノウハウが属人化してしまいます。次世代にスキルやノウハウを継承できず、属人化した生産工程で製品を製造し続ければ、将来的に生産量と品質が低下します。
結果として競争力が低下することで、企業の利益が減少し事業規模の収縮や赤字化に追い込まれるリスクが生じます。
従業員の負担が増加する
十分な人手を確保できていない場合は、従業員の負担が増加するため対策が必要です。従業員1人ひとりの負担が増加すれば、疲れやストレスを溜め込み、モチベーションが低下します。さらに離職や休職が増え、さらに人手が不足する悪循環に陥ることもあります。
人手不足の職場では長時間労働や休日出勤といったオーバーワークが発生しやすくなり、人材の定着・採用が難しくなるため、根本から問題を解決する必要があります。
お客さま満足度が低下する
人手不足の状態では生産性が低下し、品質の確保・向上が難しくなるため、お客さま満足度の低下へとつながります。品質の低い製品を市場に流通させた場合、企業のブランドイメージも低下しかねません。
また、人手不足によって管理業務に費やすリソースが不足すると、市場ニーズや在庫数の調査を行えず、機会損失が生じるリスクもあります。
DXで製造業の人手不足を解消する打開策
製造業の人手不足への対策として、DX化は有効です。
DXは、人手不足の組織でも作業を自動化・効率化し、限られたマンパワーでも業務を遂行できるよう業務改善を実現できます。
DXで製造業における人手不足を解消する具体的な打開策は、次のとおりです。
- 作業を自動化する
- 現場作業を可視化する
- 市場分析やバックオフィスにもICTを取り入れる
- ノウハウをデータベース化する
各打開策を参考に、自社で取り入れるべき施策を検討しましょう。
作業を自動化する
設備や機材のDX化によって作業を自動化させれば、限られた人員でも十分な生産量を確保でき、従業員の負担を軽減することが可能です。
さらに、AIを搭載した設備を導入すれば簡単な作業を機械化でき、限られたマンパワーを有効活用して高品質な製品を製造できます。業務の効率化によって労働時間を削減できるため、生産性の向上や従業員の定着率向上も見込めます。
現場作業を可視化する
人手不足の環境では、品質管理や生産管理が疎かになる可能性があります。生産計画を立案しても、計画どおりに作業が進まなければ納期遅れや品質の低下につながります。
限られた人手でも品質管理・生産管理を徹底し、高品質な製品を期限内に納品するために、DXで現場作業を可視化しましょう。生産管理システムなどを活用して現場作業の進捗状況や作業時間、不良やミスの発生を可視化すれば、現場の無駄を省けます。
さらに効率的な作業手順へ改善したり、不良やミスが多い作業を洗い出したりと、生産性を高める対策を講じることも可能です。
市場分析やバックオフィスにもICTを取り入れる
市場分析やバックオフィスにもICTを取り入れることで、コストの削減と業務効率の向上が期待できます。バックオフィスとは、お客さまと直接的にコミュニケーションを取らない経理や人事、労務、総務などのことです。
市場分析やバックオフィスにICTを取り入れれば、少ない人数で業務を遂行し、人件費を削減できます。データ活用による高度な市場分析を行うことで生産性とサービス品質向上を図り、市場ニーズを満たした製品・サービスの提供も期待できます。
また、バックオフィス業務を圧縮すれば空いたリソースを現場に回せるため、人手不足の課題解消にもつながります。
ノウハウをデータベース化する
人手不足解消におけるDX化では、自動化だけでなく知識やノウハウのデータベース化も重要です。
人手不足の環境では、新人作業員にスキルやノウハウを教育することが難しく、技術の継承が滞ってしまいがちです。しかし、熟練した技術者のノウハウをデータベース化すれば、人手不足の環境でも新人作業員へスキルやノウハウを伝達し、技術が継承できずに失われてしまう事態も回避できます。
また、人的コストをかけなくても熟練の技術者のノウハウを新人に継承することができるため、教育効率も高まります。
製造業の人手不足を解消するためDX化を促進しよう
全国的に人手不足の状況が続いており、製造業でも人材獲得と業務の効率化が求められています。
製造業における人手不足の解消には、DX化の推進が有効です。AIを活用した業務の自動化や、テクノロジーを活用した新たな価値の創造など、企業に付加価値を与える施策としてDX化を進める企業も増加しています。
下記のホワイトペーパーでは、DX推進が高まる背景や製造業でDX化が進まない理由を詳しく解説しています。DXの推進方法も併せて解説しているため、人手不足を解消する打開策としてぜひ確認してみてください。