正確な在庫管理は、健全な経営に欠かせません。欠品があれば機会損失を招くリスクが高まりますし、在庫過多は利益圧縮の要因になりかねないからです。
特に製造業の在庫管理では、原材料、仕掛品、半製品それぞれに在庫管理が必要になります。
本記事では、半製品の意味や具体例、仕掛品との違い、さらに管理方法について解説します。
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半製品とは
「半製品」とは、一定の製造工程が終了し、そのままで販売や貯蔵が可能な中間製品を意味します。
例えば、ある製品がA〜Eの5つの工程で生産されているとしましょう。工程Eが終了すると、製品にラベルが貼付され、パッケージも完了済みで出荷・販売可能とします。
しかし、製品の性質上、工程Cと工程Dが終了したそれぞれの段階でも販売可能な場合、これらの商品は半製品に該当します。
特に汎用性の高い部品やモジュールなどの場合、最終工程まで行かなくても途中で製品として需要があるケースが少なくありません。買い手としては、そのままの状態で仕入販売したり、独自の加工を施したうえで販売したりする業者が想定されます。
工程Eを経過した完成品だけでなく、C・D工程の中間製品も同時に販売した方が高い収益が見込める場合は、半製品でも企業にとって重要なリソースとなることもあるのです。
半製品の例
半製品の具体例を3つご紹介します。
【食品】冷凍惣菜
餃子や肉じゃがなどの冷凍惣菜は、場合によって半製品の一種となります。
スーパーやコンビニで冷凍食品としてパッケージ販売されている場合は、販売可能な完成品といえるため半製品ではありません。
しかし、大手レストランチェーンが工場で冷凍惣菜を生産し、それらを各店舗に配送のうえ注文が入った時点で最終工程を経て提供する場合を考えましょう。このパターンで冷凍惣菜を別の飲食店やホテルなどに卸販売している場合は、半製品に分類されます。
自社のレストランで提供する場合は、最終の調理工程が必要となるため仕掛品となります。
なお、肉じゃがに使う加工されたニンジンや餃子の餡なども、そのままでは販売できず、追加工程を経る必要があるので仕掛品です。
【家電】DCモーター
DCモーターも、半製品の代表格です。
直流電流で動くDCモーターは、構造が単純なため低コストで製造でき、小型化によって持ち運びもしやすいので、さまざまな機器で使用可能です。
民生品では、エアコン、扇風機、冷蔵庫、電動歯ブラシ、コピー機・プリンター、産業用では、医療機器や自動車、ベルトコンベヤーなどに使用されます。
製造業者の中には、DCモーターをそのまま販売するだけでなく、ユニットやモジュール化し、取引先のニーズに合わせてカスタマイズするケースがあります。この場合、販売可能なDCモーターは、半製品です。ユニットについても、最終に至るまで複数の工程を踏み、その途中で販売可能な製品があれば、半製品となります。
【製油】ナフサ
原油から精製されるナフサも半製品です。
通常、ナフサはそのままで使用されることはありません。エチレン、プロピレン、ベンゼンといった石油化学基礎製品に加工され、そこからプラスチック、合成繊維、合成ゴムなどの石油化学誘導品が生産されます。
さらに、石油化学誘導品から、衣類やプラスチック製品、家電といった身の回りのさまざまな製品に加工されます。
このように、ナフサは精製されると最終製品ではなく、さまざまな目的で販売されるため半製品となるのです。
半製品と仕掛品の違い
半製品と似た意味で使われる言葉に、仕掛品があります。
仕掛品は、半製品と同じ中間製品ですが、そのままでは販売や貯蔵ができない状態のものを指します。つまり、上記の例でいうと最終工程のEまで進まなければ販売できない商品ということです。
半製品の管理方法
半製品を在庫管理する方法を解説します。
棚卸資産として管理
半製品は、棚卸資産として管理します。
棚卸資産とは、販売対象となる製品や商品、製造途中の製品、使用予定のある事務用品や用紙、什器といった消耗品などを指します。そのため、半製品も棚卸資産の一部です。
棚卸の方法
棚卸資産である限り、半製品は棚卸の対象です。
棚卸は、年度末や半期末、毎月末など、扱う製品に応じて一定の時期に必ず行います。
棚卸には、「実地棚卸」と「帳簿棚卸」があります。
帳簿棚卸は、仕入や製造した数から販売した数を差し引くだけです。ただし、ヒューマンエラーによって実際の在庫数と帳簿が合わないことがあるので注意が必要です。
特に製造の途中過程で生産される半製品の場合、最終製品に加工される仕掛品と別に管理する必要があり、目視で確認しなければ混同してしまうリスクがあるため、実地棚卸の方が確実で安心です。
まとめ
半製品とは、一定の製造工程を経た中間製品で、販売や貯蔵が可能なものを意味します。同じ中間製品でも、そのままでは販売できないものは仕掛品となります。
半製品は棚卸資産にあたるため、在庫品の一部として適正に管理しなければなりません。その際は、さらに工程が残されている仕掛品と区別する必要があります。
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