発注管理をエクセルで行うと、円滑な業務運営とコスト削減が期待できます。導入コストが低く、シンプルな操作性で誰でも簡単に始められるという大きなメリットがあるため、数多くの企業で利用されているツールです。また、関数やピボットテーブルなどの機能を活用することで、データ分析や集計を行えます。
しかし一方で、データ量が多くなると非効率になったり、セキュリティリスクが高まったりするデメリットも存在します。
本記事では、エクセルで発注管理を行うメリットとデメリットに触れながら、導入を検討する際のポイントについて説明します。
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発注管理をエクセルで行うメリットとデメリット
エクセルを使った発注管理は、誰でも扱いやすい一方で、ヒューマンエラーによるリスクが懸念されています。ここでは発注管理をエクセルで行う際のメリット、デメリットをご紹介します。
メリット
ここでは以下の5つのポイントに触れながら発注管理をエクセルで行う際のメリットを解説します。
- 導入・運用のコストが低い
- 誰でも利用しやすい
- データ分析・集計機能
- 柔軟性
- 共有・連携が容易
導入・運用のコストが低い
エクセルは多くの企業で導入済みのため、追加投資なしで発注管理を始められます。
まだ導入していない企業でもMicrosoft Offiiceのライセンスを購入すれば、比較的低コストでエクセルを利用できます。多くの社員が利用経験があるツールなので、ツール活用のための講習会を開いたり、マニュアルを作成したりするためのコストもかかりません。
誰でも利用しやすい
エクセルは基本的な機能のみならず、マクロ機能やアドイン機能などを活用することで、簡易的な発注管理表を作成できます。
また、関数の応用や外部ツールとの連携など、一般公開されているノウハウが多く存在するため、それらを活用して誰でも利用しやすい発注管理表を作れる点も魅力です。
データ分析・集計機能
エクセルには、平均値、中央値、標準偏差など基本的な統計量を計算する関数があります。
また、ヒストグラムや散布図などのグラフを作成する機能も備わっているほか、データを集計するピボットテーブルや、複雑な分析を可能にしたツールをエクセル内ですべて利用可能です。
柔軟性
エクセルは、テンプレートを編集したり、マクロを組んだりすることで、自社のニーズに合わせた発注管理ができます。標準機能に加え、拡張性も高く、柔軟な運用が可能です。
例えば、発注先ごとに異なる項目を追加したり、複雑な計算式を組み込んだりすることで、より高度な発注管理システムを構築できます。また、マクロを組むことで、繰り返し作業を自動化したり、データ分析を行ったりすることも可能です。
自社の業務フローに合わせた発注管理システムを作りたい、あるいは、将来的にシステムを拡張したいとお考えであれば、エクセルの柔軟性は大きな強みとなります。
共有・連携が容易
エクセルではOne Driveのクラウドストレージサービスを利用することで、容易にファイルの共有が可能です。また、ファイルを保存時にアクセスするユーザーの権限も設定可能であり、データの欠損や情報の保護にも役立ちます。
デメリット
一方で、エクセル発注管理には以下4つのようなデメリットもあります。
- データ量が多い場合は非効率
- セキュリティリスク
- ヒューマンエラー
- モバイル操作には不向き
データ量が多い場合は非効率
エクセルは、データ量が増加すると処理速度が遅くなり、作業効率が低下する可能性があります。大量のデータを取り扱う場合は、他のツールも検討する必要があります。
特に、複雑な計算式やマクロを使用している場合、処理速度が遅くなる傾向があります。また、データ量が多いと、ファイルサイズが大きくなり、共有や保存に時間がかかる点もデメリットです。膨大なデータを扱う発注管理を検討している場合は、エクセルの処理速度の遅さに注意する必要があります。
セキュリティリスク
エクセルファイルはパスワード設定などを行わない限り、簡単に閲覧・編集できます。最近ではフィッシング詐欺に加え、マイクロソフトオフィスのソフトウェアに潜らせ、相手の情報を盗み取るマクロウイルスなど、さまざまなリスクを考慮しなければいけません。
また、メールを通じてウイルスに感染するケースもあり、エクセル以外にもマイクロオフィスのソフトウェアを連携している際には、身に覚えのないファイルを不用意に開かないなどの対策も必要です。
ヒューマンエラー
エクセルは、データ分析や管理に非常に便利なツールですが、手動入力によるデータ入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすい傾向にあります。入力漏れや誤入力は、情報漏えいなどの深刻なリスクにもつながりかねません。
こういったリスクを回避するには、日頃から繰り返しチェックを行うフローを取り入れたり、データ入力にはマクロ機能を使ったりするとよいでしょう。
また、近年では、AIやRPAなどの技術を活用した、データ入力の自動化ソリューションも登場しています。これらのソリューションを導入することで、ヒューマンエラーを大幅に削減し、作業効率を劇的に向上させることが可能です。
モバイル操作には不向き
エクセルで扱う項目が多いほど、シートは縦横共に長くなりやすいです。スマートフォンの画面上では一度に表示できる範囲があまりにも狭いため、特定の欄を見る際にはいいかもしれませんが、基本的な編集とデータ入力には作業がしづらいデメリットがあります。
エクセルを活用した発注管理表の作成方法
発注漏れや過剰発注を防ぎ、在庫を最適なレベルに保つことは、コスト削減や利益向上に直結します。しかし、手作業での発注管理は煩雑で、ヒューマンエラーを含めたミスの多さを懸念している企業も少なくありません。そこで注目したいのが、エクセルを活用した発注管理です。
主な作成方法
エクセルで発注管理表を作成するには、以下の2つの方法があります。
- 1.手動で作成する
- 2.テンプレートを利用する
1.手動で作成する場合
手動で作成する場合は、以下の項目を参考に発注管理表を作成します。
- 発注番号: 発注ごとにユニークな番号を付与。
- 発注日: 発注日を入力。
- 納品予定日: 納品予定日を入力。
- 依頼者: 発注者を入力。
- 品目: 発注する品目を入力。
- 数量: 発注数量を入力。
- 単価: 単価を入力。
- 金額: 数量と単価を掛けた金額を入力。
- 納品先: 納品先を入力。
- 備考: 備考があれば入力。
2.テンプレートを利用する場合
テンプレートを利用する場合は、以下の手順で発注管理表を作成します。
- インターネット上からテンプレートをダウンロードします。
- ダウンロードしたテンプレートを開きます。
- 自社の業務に合わせて、項目を追加したり、削除したり、レイアウトを変更したりします。
- 必要に応じて、関数やピボットテーブルなどの機能を追加します。
- 保存して完了です。
発注管理表のテンプレート
発注管理表のテンプレートは、インターネット上や書籍などで無料でダウンロードできます。基本的な項目を網羅したテンプレートが多く、すぐに利用可能なものが多いです。以下4種類が代表的なテンプレートになります。
- シンプルなテンプレート
- 詳細なテンプレート
- 業種特化型テンプレート
- Excel標準テンプレート
1.シンプルなテンプレート
商品名、数量、単価、発注先、納期など、基本的な項目のみなどの基本要素を網羅したテンプレートになります。初めて発注管理を行う方や、簡単な発注管理を行いたい方におすすめです。
2.詳細なテンプレート
商品コード、発注番号、発注日、納品予定日、担当者、備考など、より詳細な項目を網羅したテンプレートです。複雑な発注管理を行いたい方や、詳細な情報を記録、管理したいユーザーにぴったりな仕様です。
3.業種特化型テンプレート
製造業、卸売業、小売業など、業種に特化したテンプレートです。業種特有の項目を網羅しており、より効率的な発注管理を実行できます。
4.エクセル標準テンプレート
エクセルには、発注管理に役立つ標準テンプレートが用意されています。請求書や納品書などのテンプレートを活用することで、発注から納品までの流れを一貫して管理できます。
エクセルで発注管理表作成時に役立つ関数
エクセルには、利用用途に応じた多くの関数が存在し、細かな使い分けをすることで複雑な作業が可能です。ここでは発注管理表の作成時に役立つ関数を4つご紹介します。
- SUMIF関数
- VLOOKUP関数
- INDIRECT関数
- ROUND関数
SUMIF関数
SUMIF関数は、指定した範囲の中から、条件に合致するセルの値のみを合計する関数です。例えば、発注先別や商品別の発注金額を合計したい場合、SUMIF関数を活用することで、効率的に必要な情報を集計することができます。
SUMIF関数の基本的な書式は以下の通りです。
SUMIF(範囲, 条件, [合計範囲])
範囲: 条件を適用するセル範囲を指定します。
条件: 合計対象となるセルを絞り込む条件を指定します。
[合計範囲]: 合計する値を含むセル範囲を指定します。省略可。範囲と同じ場合は省略できます。
VLOOKUP関数
VLOOKUP関数は、Excelで縦方向に並んだ表から、条件に合致する値を検索し、その行にある別の値を取得するための関数です。商品コードやお客さまIDなどをキーにして、価格や在庫数などの情報を効率的に抽出できます。
VLOOKUP関数の基本的な書式は以下です。
VLOOKUP(検索値, 範囲, 列番号, [検索オプション])
検索値: 検索したい値を入力します。商品コード、お客さまID、氏名など、キーとなる値を指定します。
範囲: 検索対象となる表の範囲を指定します。検索値を含む列と、検索結果を取得したい列を含む範囲を指定する必要があります。
列番号: 検索結果を取得したい列の番号を指定します。検索値を含む列から何番目の列を取得したいかを指定します。
[検索オプション]: 検索方法を指定します。省略した場合、完全一致検索が行われます。
INDIRECT関数
INDIRECT関数は、セル参照を文字列として扱い、間接的に参照する関数です。通常のセル参照とは異なり、セルアドレスを直接入力するのではなく、セルに格納されている文字列をセル参照として解釈します。
INDIRECT関数の基本的な書式は以下です。
INDIRECT(参照文字列)
参照文字列: セル参照を含む文字列を指定します。セルアドレス、シート名、ブック名などを含めることができます。
二重引用符: 参照文字列は必ず二重引用符で囲む必要があります。
ROUND関数
ROUND関数は、数値の小数点以下の桁数を指定して丸め処理を行う関数です。売上金額の合計を円単位で表示したい場合や、在庫数を整数に調整したい場合などに役立ちます。Excelでよく使われる関数の一つであり、応用可能な範囲が多いのも特長の一つです。
ROUND関数の基本的な書式は以下です。
ROUND(数値,桁数)
数値: 丸め処理を行う数値を指定します。
桁数: 小数点以下の桁数を指定します。正の値を指定すると小数点以下の桁数を残し、負の値を指定すると小数点以下の桁数を切り捨てます。0を指定すると小数点以下を切り捨て、整数に変換可能です。
エクセルで発注管理をする際のポイント
関数やテーブルの使い方をよく理解した上で、リスクを避けることは必要不可欠です。ここからはエクセルで発注管理する際に注意したいポイントを解説します。
- 発注プロセスの効率化
- 発注点を設ける
- 発注点の注意すべきポイント
発注プロセスの効率化
エクセルで発注管理を行う際には、発注プロセスを効率化することが重要です。以下に、発注プロセスを効率化するためのポイントをいくつかご紹介します。
テンプレートを活用する
上記でご紹介したように、テンプレートを活用することで、発注管理表の作成時間を短縮することができます。
関数を利用する
関数を利用することで、データの集計や計算を自動化することができます。
マクロを利用する
繰り返し作業が多い場合は、マクロを作成することで、作業を自動化することができます。
ワークフローを構築する
発注プロセス全体をワークフローとして可視化することで、非効率な部分を把握し、改善できます。
発注点を設ける
発注点を設けると、在庫切れや発注漏れを防げるため、在庫の管理状況を大幅に改善できます。また、発注点を設定すると、在庫がある一定量を下回った時に機能する状態にすると、発注作業の全体的なコストカットにもつながります。
発注点の注意すべきポイント
発注点を設ける際には、以下の点に注意する必要があります。
発注リードタイム
発注から納品までのリードタイムを考慮する必要があります。リードタイムが長い場合は、発注点を早めにしましょう。
安全在庫
安全在庫とは、発注から納品までの間に需要が変動した場合でも、品切れを起こさないように確保しておく在庫のことです。安全在庫は、過去の需要データなどを基に設定します。
在庫回転率
在庫回転率とは、1年間で在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。在庫回転率が高いほど、在庫管理が効率的であると言えます。発注点は、在庫回転率を考慮して設定する必要があります。
発注管理表の最適化と注意点
発注管理表は、企業における業務効率化に欠かせないツールです。しかし、作成方法や運用方法によっては、かえって業務を煩雑化させてしまう可能性もあります。そこで、ここでは発注管理表を最適化するためのポイントと、作成・運用ときに注意すべき点を解説します。
テンプレートの活用
発注管理表を作成する際には、最初から作るのではなく、テンプレートを活用することをおすすめします。インターネット上には、さまざまな種類のテンプレートが公開されていますので、自社の業務に合ったものを選ぶことができます。
テンプレートを活用すると、作成にかかる時間を大幅に短縮できます。
データの保護とセキュリティ
発注管理表には、取引先情報や発注金額などの機密情報が含まれているため、データの保護とセキュリティには十分注意する必要があります。具体的には、以下の対策が有効です。
- アクセス権限を設定する
- パスワードを設定する
- 定期的にバックアップを取る
- 情報漏えい対策ソフトウェアを導入する
自動化ツールの導入
発注処理には、発注書の作成、送信、受領、支払処理など、さまざまな作業が必要です。これらの作業をすべて手動で行うのは、非常に時間と労力がかかります。自動化ツールを導入することで、業務効率化だけでなく、ヒューマンエラーの削減にもつながります。
1.定期的な見直し
発注管理表は、業務内容や環境の変化に合わせて定期的に見直す必要があります。見直しを行う際には、以下の点に注意しましょう。
- 不要な項目を削除する
- 必要に応じて項目を追加する
- 項目の並び順を変更する
- デザインを変更する
2.関係者との共有
発注管理表は、関係者全員で共有することが重要です。共有することで、情報伝達をスムーズにし、誤発注などのトラブルを防げます。共有方法は、紙ベースで行うこともできますが、近年ではクラウドサービスなどを活用して共有することも一般的です。
発注の一括管理はPROCURESUITE(プロキュアスイート)がおすすめ
ここまで発注管理をエクセルで行う際のポイントや、利用時の注意点をご紹介しました。
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