第五回  在庫管理のためのBOM
第三回「工程設計のためのBOM」では、BOMの基盤となるマテリアル・マスタに登録するべき品目とは、『在庫品として数量を管理すべきもの』だとご説明しました。 理由は単純です。在庫管理をITシステムで行う場合には、品目コードと保管場所がキーとなった在庫テーブルを維持する必要があるからです。マテリアル・マスタに品目コードの登録がなければ、その在庫数量を入力することができません。

ところで、ここでしばしば問題になりがちなことがあります。それは同一性の問題、すなわち、「2つの品目が同一であるかどうか」、ということに関する議論です。そんなことは自明ではないか、と思われるかもしれませんが、じつはかなり奥の深い問題なのです。
わたしがよく使う例をとりましょう。1Lの牛乳パックと2Lの牛乳は同じものか、違うものでしょうか。低脂肪乳と無調整乳は、別物か。十勝産と岩手産は区別すべきか? みなさんがレストランの仕入係だったら、どう考えますか。
牛乳の産地や製造方法は、ある意味では牛乳という品目の品質をきめる「属性」に思えます。味に大差がない限り、コップに注いでお客の前に出してしまえば同じですから、品目としての区別はいらないと考えるでしょう。

ところが、みなさんがもしチーズ工場の資材係だったら、両者は大違いです。製品の出来に直接影響します。品質の差では済まない。低脂肪乳と無調整乳は別物と考えるでしょう。
いったい、牛乳の調整方法は属性項目に書くべき事柄なのか、それとも品目分類の基準として縦に書くべきなのか。そもそもマテリアルの区分と、属性の区分はどこで切り分けるのか?

答えは、「利用目的によって違う」です。マテリアルの同一性とは、「使用目的に照らしてキーとなる属性群が、同一の条件を満たしていると認められるマテリアルの集合である」と定義されます。同一性は、使用目的と、属性群の定義と、条件付けによって、異なるのです。
続きはダウンロードで