※こちらの記事は発行時(2022年9月)の文章のまま掲載を行っております。
地球温暖化の防止は、今や企業が単体で進めるだけでなく、サプライチェーン全体で対策を考えなければならない課題になってきました。
IT関連業界としても、従来の「グリーンIT」の促進だけでなく、さまざまな社会情勢を考慮しながら対策を考える「サステナブルIT」の促進が求められています。そこでは、サステナビリティへの取り組みが、企業の事業戦略にも大きな影響を与えるかもしれません。
本特集では、そのような社会の変化と、企業のサステナブル戦略を支援するソリューションなどについて紹介します。
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重要になってきたIT機器の省エネ課題
人々の生活に甚大な被害をもたらす異常気象。年々規模が拡大しているように思われます。こうした被害を少しでも防ぐために、異常気象の原因とされる地球温暖化の防止対策は、早急に取り組むべき国際的な最重要課題といえるでしょう。
こうした現状で、経済活動や社会活動を停滞なく継続させるには、温室効果ガスの排出を抑制するための画期的な技術革新が必要になると考えられています。
一方で、本格的なIT化やDXの推進に伴い、社会で扱う情報の量は今後も増加の一途を辿っていくでしょう。こうした情報爆発によって情報量が大幅に増えれば、IT機器による処理の機会も拡大し、機器自体の省エネ対策も重要な課題となります。
すでに日本でも、政府や業界団体が「グリーンIT」を掲げ、ITを用いて脱炭素社会構築に向けて社会や企業の環境負荷低減につながる具体的な対策を進めてきました。
2008年には経済産業省の「グリーンITイニシアティブ」のもと、ITやエレクトロニクス産業の振興および技術開発促進などを目的とする電子工学・情報技術分野の業界団体「電子情報技術産業協会(JEITA)」を含む関連7団体が、「グリーンIT推進協議会」を設立。IT技術によってCO2削減を推進する事業を、産学官のパートナーシップによって国内外で展開しました。
2012年度末には、より具体化した活動を進めていくため「グリーンIT推進協議会」を解散。協議会の活動のうち、ITソリューションによってCO2削減を見える化する事業を引き継ぐ、「グリーンIT推進委員会」をJEITAが立ち上げました。
「グリーンIT」から「サステナブルIT」へ
このようにグリーンIT事業は十余年にわたり推進されてきましたが、地球温暖化は「温室効果ガスをいかに減らすか」の対策だけでは追いつかないほど深刻化していきました。
そこでJEITAは、2020年4月に「グリーンIT推進委員会」を「サステナブルIT推進委員会」と改組。それまで主軸としてきた地球温暖化対策への注力を継続しつつ、さらに幅広い社会課題の克服にデジタル技術を活用する活動を進める、より柔軟性を持った体制に組み替えました。
社会やIT業界を取り巻く情勢の大きな変化の1つとして、2015年に国連気候サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」をはじめとする、多様な課題への対応が求められるようになってきました。それに伴い、企業におけるこうした課題への取り組みが評価される、ESG投資(環境・社会・ガバナンスに配慮した企業に投資を行なうこと)も拡大しています。
こうしたIT分野における変化を後押しすることになったのが、DXの推進です。AIやIoTをはじめとした技術の進展は著しく、先進技術を活用したDXの動きが加速していますが、デジタル化の進展はビジネス分野においてさまざまな新規事業を創出するにとどまらず、社会の利便性につながり、なおかつ環境や社会課題の解決にも貢献することが期待されています。そして、この貢献をステークホルダーに分かりやすく示すことが、消費者やESG投資家からの総合的な評価につながります。
新型コロナウイルス感染症の蔓延は国際社会に大変動をもたらし、その克服の手段としてもデジタルの活用はますます重視されています。日本でも、企業活動にテレワークが推奨され、一方では少子高齢化対策の手段として注目されながら普及が進まなかった遠隔医療や遠隔授業などの採用も積極的に進むようになりました。
こうした変容は、「サステナブルIT推進委員会」が当初想定していた事業の対象範囲を大きく超えるものでした。2020年10月には、社会課題に対するデジタル技術の影響評価を考察する「インパクト評価小委員会」において、コロナ感染拡大による行動変容の対策として、デジタル技術が役立ち、社会や環境にインパクトを与えたことが指摘されています(図1)。
企業単体ではなくサプライチェーン全体で温室効果ガスの排出削減を
こうした中、さまざまな企業はサーバの統合や仮想化、クラウド化などといった最新技術を活用し、テレワーク、ペーパーレス、シームレスな情報共有などを進める努力を続けています。とはいえ、もはや企業単体での取り組みでは、サステナビリティは達成できないことが明白になってきました。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を実現するには、サプライチェーン全体を巻き込む必要があるということです。
そこで近年、さまざまな企業が取り組み始めているのが商品や製品を消費者に提供するまでの過程全体において、経済効率と環境負荷軽減の両立を目指す取り組み「グリーンサプライチェーンマネジメント」です。
この取り組みで、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出の削減はどこを目指せばいいか。その指標となるのが、事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる温室効果ガスの排出量を合計する「サプライチェーン排出量」の算定です。環境省が示す「サプライチェーン排出量」では、企業活動を「上流」「自社」「下流」の3つに分け、原材料調達をはじめ製造や物流、販売、廃棄などといった一連の流れ全体から発生する、温室効果ガスを導き出します。
「サプライチェーン排出量」では、事業者の温室効果ガス排出量を「Scope1」「Scope2」「Scope3」という3つの区分で整理します(図2)。
「Scope1」は、事業者が直接排出した温室効果ガスの排出量を指し、「直接排出量」とも呼ばれます。また、「Scope2」は、他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの排出量であり、「間接排出量」とも呼ばれます。
そして、「Scope3」とは「Scope1」と「Scope2」をのぞいた、サプライヤーから排出される間接的な温室効果ガス排出量のことを指します。自社が他社から購入した製品の製造時に排出される温室効果ガスや、自社の製品を消費者が使用した時に排出される温室効果ガスなどが「Scope3」に相当し、これは15のカテゴリーに細かく分類されています。そしてサプライチェーンにおける温室効果ガスの排出は、この15のカテゴリーのどれかに該当することが多く、「Scope3」の排出量がサプライチェーン排出量のほとんどを占めていると言っても過言ではありません。特に製造業においては、ほぼ全てのカテゴリーが関わってくるでしょう。
そのため企業としては、サプライチェーンが排出する全体像(総排出量および排出源ごとの排出割合)を把握することで、優先的に削減すべき対象が特定でき、長期的な環境負荷削減戦略や事業戦略策定のヒントを導き出すこともできるようになるのです。
サステナビリティへの取り組みが事業戦略になる
さらに、「サプライチェーン排出量」の算定には、個別の企業が行なった温室効果ガスの削減を、各企業でシェアできるという特徴があります。サプライチェーン上の1社が温室効果ガスの排出量を削減すれば、他のサプライチェーン上の各事業者にとっても、自社の排出量が削減されたことになるからです(図3)。
現状において「Scope3」の温室効果ガスの算出方法は、「取引先から排出量データ(1次データ)の提供を受ける方法」と「既存のデータベースなどの排出原単位(2次データ)から推計する方法」があります。ただ、2次データを利用する場合、排出原単位が固定的なため、サプライチェーンの上流サプライヤー側の努力が下流サプライヤーに反映されにくいという課題もあります。そのためJEITAは、2021年10月に「Green×Digitalコンソーシアム」を設立、サプライチェーン全体の温室効果ガスに関するデータを可視化する基盤作りに取り組んでいます。
とはいえESG経営を進める大手企業におけるサプライヤーの選択肢としては、サステナブルな商品やサービスや活動を展開している企業をパートナーに選ぶことが大きなメリットになります。
一方で、サプライチェーンの一部である中堅・中小企業のサプライヤーにおいては、サステナブルな原料や部品を供給するだけでなく、自社の企業活動の中で温室効果ガスの排出量削減を積極的に行なっていれば、既存顧客との取引関係を継続・拡大させるだけでなく、新規顧客の開拓につながる可能性も考えられます。
しかし逆にそれらを怠っていると将来、既存顧客との取引が縮小・終了するおそれも考えられるでしょう。つまり中堅・中小企業のサプライヤーにとってサステナビリティへの取り組みは、事業戦略の中に積極的に取り入れていくべきテーマなのです。
DAiKOでは、そのためのお手伝いができるソリューションとして、「環境への配慮」「社会への貢献」「コーポレートガバナンスへの取り組み」といった分野で各種ソリューションを取り揃えています(図4)。
「環境への配慮」では、電子契約システム「DD-CONNECT」があります。様々な業種で活用でき、契約書や請負注文書、注文請書などのペーパーレス化を実現できます。また、PCやモバイル端末を活用して双方向で通信する「i-Compass」は、給与明細のほか災害時の安否確認や社内通知、アンケートなどに活用できます。
「社会への貢献」では、スマートウォッチを活用した「IoW」があげられます。現場での一人作業の見守りや、熱中症への対策を通して、現場で働く作業者自身への安全管理の支援、生産性の向上に取り組んでいます。そして「コーポレートガバナンスへの取り組み」では、「SuperStream」「GLOVIA iZ」など、各社ERPをご提案しています。
これらのソリューションでお客さまの事業戦略をご支援し、企業活動の発展に協力させていただきたいと考えています。
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本記事はD’sTALK Vol.52の掲載コンテンツです。
その他の掲載コンテンツは下記のページからご覧ください。
https://www.daikodenshi.jp/daiko-plus/ds-talk/vol-52/
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