山間地での設置が増えてきた太陽光発電パネル
太陽光発電は手軽に導入できる再生可能エネルギーとして、広く普及してきた。特に、2012年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)により太陽光発電設備は急増した。こうした流れを受け、愛知金属工業でも太陽光パネル架台の設計・製造に取り組み始めた。現在までに約30万キロワット相当の太陽光パネル架台を、全国各地の太陽光発電所へ納入する実績を上げている。
だが、太陽光パネルの設置が容易な平坦な土地へは導入がほぼ済んでいる。昨今では山地やゴルフ場跡地など、地盤が傾斜している土地に太陽光パネルを設置することが多くなってきた。こうした土地に太陽光パネル架台を設置する場合、通常は整地を行なうが、それにはコストがかかる。そのため、最近では整地をせずに土地の起伏を残したまま架台を設置できるようにしてほしい、という要望をお客さまから提示されることが多くなってきた。
起伏のある地盤に太陽光パネル架台を設置する場合、平地での設置とは異なり隣り合ったパネルが日光を遮って影をつくり、発電効率が損なわれることがある。そのため、傾斜地での太陽光パネル架台の設定に関しては、太陽の動きを計算してパネルに影が落ちないような配置を考えなければならない。
設置にはもう1つの難易度の高い作業がある。「地形に合わせて個別に架台の高さを調整し、パネルが太陽光を受けやすい角度にする必要があります。この作業を現場で人間が調整しながら行なうのは、現実的ではありません」と、取締役生産管理部長 兼 販売本部メガソーラープロジェクト部長の清水浩司氏は、傾斜地における太陽光パネル架台設定の難しさを語る。
そこで愛知金属工業は、3次元スキャナーで計測した土地の地形データを読み込み、最適な太陽光パネル架台の配置を自動的に計算して画面に表示する、「太陽光パネル自動配置システム」の開発協力をDAiKOに依頼した。


実際のシステム上のシミュレーション結果。架台の前後問隔を700mmに設定したもの(左)と200mmに設定したもの(右)。配匿条件を変えた場合のパネル枚数や発電容量が予測可能だ。

実際の土地の起伏などを計互した3次元のバネル配置イメージ。様々な角度からのイメージを確認できる。写真は自動配置のシミュレーション後CADで加工したもの。
共通の目標のもとに新システムを構築
愛知金属工業では以前から、3次元CADを導入して、送電用鉄塔の設計に活用していた。また、傾斜地に太陽光パネルを効率的に配置するフローも、独自に構築していた。それらのノウハウを、「太陽光パネル自動配置システム」開発にも生かそうと考えた。
「送電用鉄塔では1本ずつ異なる設計が必要になるのですが、太陽光パネル架台の場合は、1つつくればあとは同じものを使い回しができます。こうしたことから太陽光パネル架台の設計に関するシステムも、構築しやすいのではと思いました。(清水氏)
愛知金属工業がDAiKOへ相談を持ちかけたのは2017年の春のことだ。そこからシステムの完成までには1年かかった。
当初、同社メガソーラープロジェクトチームのメンバーとDAiKOは2週間に1回のペースで、システムの確認を行なった。問題点があれば次のミーティングまでに解決する。そのミーティングで次の問題点を洗い出し、また次回までに解決する。そうした試行錯誤の末に、徐々に完成度を上げていった。
「おそらく、他社もまだ使っていないだろうと思われるシステムを、メガソーラープロジェクトチーム全員とDAiKOが一丸となり生み出そうとしました。頻繁にミーティングを繰り返し手間はかかりましたが、お互いにいいものにしたいという目標に向かって、何度もプロトタイプをつくっては動かしてみてという開発手法を採用しました」(清水氏)
認知度を上げ、多くのお客さまに使ってもらいたい
こうして完成したシステムは画期的なものとなった。たとえば木が生えていて地面の様子がわからない土地でも、ヘリコプターを使ったレーザー測量によって地盤の形状がわかる。そのデータをもとに「太陽光パネル自動配置システム」で計算すると、太陽光パネル架台を設置した際の様子が画面に表示される。設置できるパネルの枚数や架台の種類、杭の長さなど、様々なデータも表示可能だ。
パネル同士の間隔の設定を変えた場合のパネルの総数もシミュレーションできる。これによって、全体の発電量も計算できるので、太陽光パネルの設置方法を変化させた際の費用対効果がわかる。お客さまはそれ見て、太陽光発電に投資するべきか判断するわけだ。
それだけ実用的なシステムなのだが、まだまだ認知度は低い。
「太陽光発電に関連する展示会などで紹介しているのですが、まだ一部の方にしか説明できていません。もっと多くの方に、このシステムの素晴らしさを知ってもらいたい、活用していただきたいと思っています」(清水氏)
従来にない新しいカテゴリーのシステム開発であっても、DAiKOが培ってきた様々な知識や経験がお客さまのお役に立てることが証明された。