1台で周辺360°の監視を行える「マルチアイシステム」
様々な印刷物や商品の発送代行業務を行っている株式会社発送センター。金融機関や各種店頭などに置かれているポスター、リーフレット、個人宅に送付されるダイレクトメールや通信販売の購入商品など、幅広い製品の発送を請け負っている。
中心業務となるのは、宛名ラベルの印字や印刷物の作成、折り、アセンブリ、梱包、封入・封緘(ふうかん)といった発送に関わる一連の作業だ。
社内には配送先などの個人情報データのほか、約2000種にもおよぶ製品パンフレットなどが在庫として常時保管されている。
そのためセキュリティ体制の強化には、つねに力を入れてきた。個人情報保護法に基づき個人情報の管理体制を整備している事業者に付与されるPマークの認定を受けているほか、電子錠による社屋の入館管理、専用カードキーによるサーバルームの入退出管理、社内各所への監視カメラの設置などを実施。高いレベルで情報や製品の安全性を守り続けている。そんな同社が新たな監視カメラシステムの導入を検討し始めたのは2015年6月のことだ。
和・洋封筒、OPPフィルム封筒への封入・封緘が行えるマシンを導入したのがきっかけだった。
新型機は大型でL 字型のため、作業場に設置してある監視カメラだけで全体をモニタリングするのが難しいことがわかったのだ。そこで注目したのが360°全方位の監視、記録が可能なカメラだ。
従来のカメラの場合、レンズの裏側がどうしても死角となってしまう。そのため、広範囲をチェックするには複数台を様々な場所に設置する必要があった。だが半球形の全方位型レンズが組み込まれたこの新型カメラなら、撮影範囲が大幅に広がり、1台で周辺360°全体の監視を行える。
画像精度、機能性、DAiKOの対応が採用の決め手
取引先で同種のカメラを見て興味を持っていた同社代表取締役 山道信弘氏は、独自に各メーカーの資料を集め始めた。そこで目に留まったのが、DAiKOが取り扱うドッドウエルBMS社製の監視システム「マルチアイシステム」だった。
実は長年付き合いがあるセキュリティ会社からは、別システムを提案されていた。だが、デモ機で実際の映像や操作性などを確認し検討した結果、「マルチアイシステム」の採用を決定。
DAiKOとの取引は初めてだったが、画像の精度とシステムの機能性、担当者のスピーディで的確な対応が決め手となったという。
「カメラから離れた場所の映像でも作業内容がはっきりと確認できた機種はこれだけでした。またモニタ画面を4分割やパノラマサイズに変更でき、データ再生時にもアングルを変えられるなど、システム的にも申し分ありませんでした」(山道社長)
そして新型作業機付近に設置を開始した。
期待以上の導入効果で記録映像の活用範囲を広げる
導入を検討し始めてから2か月後の8月中旬、監視カメラシステムが稼働を開始した。すると、当初の目的だった新型作業機の監視業務以外にも、思いがけない効果がいくつも現れた。
まず挙げられるのが、顧客満足度の向上だ。
もともと万全のセキュリティ体制を敷いていたが、「マルチアイシステム」の導入によってモニタリングできる範囲が格段に拡大。その体制は、より強固になった。
「実際のセキュリティ状況を確認したいというお客さまも少なくありませんが、実際に見学にいらした後に『万全の監視体制で、安心してお任せできます』と言っていただけました」(山道社長)
第2の効果が、事務所にいながら倉庫内や作業所の状況確認が可能になったことだ。
社内では進捗管理システムも活用しているが、作業ごとに現場担当者がシステムに入力する必要があり、これだけではリアルタイムでの状況把握が難しい。また、カメラの死角となっている作業場もあり、これまでは責任者が実際に作業場に足を運んで確認しなければならないこともあった。現在は事務所のモニタですべての確認が行えるため、現場への移動が大幅に減少した。
「事務所での作業確認は、経営層の業務をかなり効率化してくれています」(山道社長)
第3の効果は、作業場のレイアウトがどのような状態になってもカメラの死角がなくなったことだ。
同社では梱包内容や包装資材に合わせて、機械や作業台の配置をそのつど変更している。最も効率的な作業動線を確保するためだ。だが従来のカメラでは、作業台の配置によっては死角が出ることがあった。しかし現在はどんなレイアウトでも全体が見渡せるようになった。
そして第4の効果が、万が一事故が発生した時に、原因の検証が正確に行えるようになったことだ。
これまで事故発生時には、作業報告書に記録されている担当者や作業内容、終了時刻を、保存した監視カメラ映像と照らし合わせて原因を究明してきた。しかし、カメラの死角で起きた事故の場合、検証は担当者の記憶に頼らざるを得ない。だが、発送完了から2〜3か月経過後に事故が発覚する例もあり、正確な原因究明が難しいこともあった。
映像に死角がなくなった現在では、つねに正確な検証が行えるようになり、最適な事故防止策を講じることが可能になった。
しかも、新システムは検索機能も充実しており、必要な画像データをスピーディに見つけることができる。保存済みデータの再生時もズームイン、ズームアウト、アングルの変更が可能で、必要な部分をピンポイントで再生できる。そのため、画像確認や検証作業自体が以前よりスムーズに行えるようにもなっている。
同社では、現場作業の監視や映像記録以外にも、この新システムを役立てていきたいと考えている。
「映像を分析することで、これまで以上に効率的な作業場のレイアウトを考案したり、作業工程の見直しなどに活用したりしたいですね」(山道社長)
「マルチアイシステム」は、単なる記録装置としてだけでなく、業務の効率化を実現するための戦略的ツールとしても活躍が期待されている。