業務効率化を目指し、新システムを導入
ペットボトルや缶といった容器類の検査機をはじめ、検査用照明や画像処理装置などの設計、製造、販売を行っているキリンテクノシステム株式会社。多品種少量の製品を個別受注で生産している同社では、20年前から独自の生産管理、顧客管理、会計といったシステムが稼働していた 。
しかし、各部署の要請に応えてカスタマイズを重ねるうちに、システムが肥大化 。全体を把握できる人聞が誰もいない状況に陥ってしまった。また、マニュアルも未整備だったため、追加したすべての機能を使いこなすこともできず、非効率な状況にもなっていた 。
「各システムの連携が悪いという問題もありました。同じデータでもシステムごとに入力が必要なうえ、
システム聞でのデータの受け渡しも、紙に出力してそれを手入力し直すという状態だったのです」
そう語るのは、同社第一営業部部長(前経営企画室長)の片山薫氏だ。こうした問題を解消し、業務を改善するため、同社では新システムの導入を決断 。
「目的としたのは、業務の上流工程となる設計部門の効率化、コストダウン、生産性の向上、決算資料作成時間の短縮、ランニングコストの低減です」 (片山部長)
これらを達成できるシステムについて12社のベンダーから提案を募り、選考を 重ねた結果3社に絞られた。最終的に採用されたのが、DAiKO の個別受注向け生産管理システム「rBOM」だった。「rBOM」 は、ひとつのデータベース上で設計部品表と製番部品表を管理し、営業や設計、購買、製造などの各部署でリアルタイムに情報を共有できるシステムだ。同社では、それぞれの部署の意見を総合し、システムを導入する目的に最もフィットするものとしてこの「rBOM」を評価、採用が決定した。
ノンカスタマイズで業務のスリム化を推進
新システム導入にあたり、こだわったのは、部署ごとのデータの重複をなくして連携を図ること、ペーパーレス化の推進、そして可能な限り導入パッケージのカスタマイズを行わないことだった。
「カスタマイズを重ねて部分最適化したシステムは、全体最適化が難しくなりますから 、あえてカスタマイズはしない方針を打ち出したのです 。それに、導入実績の多いシステムであれば、システムに業務を合わせて変更していくことで、業務の平準化、標準化を図れるとも考えました」(片山部長)
当初は業務フローが変わることへの反発もあった。だが、稼働から1年以上が経過し、新システム導入の効果は着実に現れている 。
川崎事業部 生産管理課 課長の上原博幸氏によれば、棚卸しにおける在庫の追跡、確認にかかる時間は以前の50%に短縮できるようになったという 。
「以前は在庫に関するデータベースは紙資料とエクセルなどで作成していました。そのため、在庫の入出庫履歴の確認は、膨大な紙資料から必要な部分を探し出して行わなければならず、場合によっては追跡に3日ほどかかることもありました。現在はシステム上にデータベース機能があるため、入出庫履歴データを引き出すのも短時聞ででき、正確な情報をスピーデイに確認できるようになりました」
もちろん、同じデータを複数回入力する必要もなくなり、またデータの入力ミスによる修正作業なども格段に減った。
さらに川崎事業部 購買課 課長 森田英嗣氏によれば、購買部門でも、資材の購入に伴う作業時間を30%程度削減できたという 。
「以前は設計が購入依頼書を手書きで作成していました 。さらに注文書は『○○一式』 なる名称で発行することがほとんどで、手配詳細内訳はアクセスに別入力していました。これらの手聞をすべて省けるようになったのです。もちろん入力ミスによる誤発注は皆無となりました」
さらに、経験のある従業員でないと、原価や在庫に配慮した購買が難しかった以前のシステムに比ベ、購買記録が蓄積されている現在は、誰でも同じ精度で購買が可能になった 。
また、システム管理の面でも高い評価を受けていると語るのは、取締役経営企画室長の石倉徹氏だ。
「システムそのものの安定性が高く、ほぼメンテナンスフリーといえる状態で、システム管理担当者の負担も軽減されました」
ミスの早期発見も可能に
予想外の効果もあった 。かつては、設計部門からの部品発注に不自然な点があっても、経験を積んだ購買担当者が転記時に気づき、訂正したうえで外部に発注していた。しかしその不自然な記載は、単なる入力ミスではなく、根本的な設計ミスなどが原因の可能性もあり、そうした場合ミスに気づくのが遅れてしまっていたのだ 。
「現在は、購買部門が発注書を転記する必要がなくなったため 、誤発注をしてしまうこともありますが、逆にこうした設計ミスなどには早い段階で気づけるようになりました。その結果、設計段階での原価管理などに対する社員の意識が向上しました」 (片山部長)
様々な効果をもたらした「rBOM」だが、同社ではその可能性にさらなる期待を寄せている 。
「今後は会計システムとの連動をはかり、決算作業の時間短縮や、経営資源としてデータを役立てたいと考えています」(片山部長)
他のシステムとの連携により、「rBOM」は同社の発展の礎となるはずだ。