従業員の増加で給与明細書配付のWEB化を検討
東日本を中心に全国展開する元気寿司は1968年に創業、1979年に会社設立した老舗の寿司チェーンだ。創業以来、順調に国内店舗を増やし、さらに海外にも積極的に店舗を展開してきた。90年代に同店名でハワイに直営店をオープン。その後はフランチャイズ形式で香港やシンガポール、マレーシア、インドネシアなどの国に出店している。
こうした積極的な事業展開によって、従業員数も右肩上がりに増え続け、 2020年には正社員とパート・アルバイトの総数が1万人を超えた。
そこで、人事部の課題として浮き上がってきたのが、毎月の給与明細書の配付作業だった。元気寿司では月末締めでその月の勤務時間を集計し、翌月の15日に給与が振り込まれる。当初、6000人ほどの従業員を対象に、手作業で行なわれてきた給与明細書の配付作業だが、従業員数だけでなく店舗数も増加し、作業はより複雑になってきた。
店舗で店長の手渡しにこだわってきたため、少なくとも給与振込日の3日前までには、店舗ごとに仕分けされた給与明細書が配送センターに届いている必要がある。土日祝日は書面を印刷する印刷会社が休みになるため、月初に連休などがあり印刷が遅れれば、そのあとの仕分け作業を急ピッチで進めないと給与振込日までに給与明細書が本人に届かなくなる危険もあった。
「過去には明細書の配付が給与日の15日をまたいでしまったこともあり、今後も続く従業員と店舗の増加に手作業で対応するのは限界が見えてきていました」(人事部次長 五十嵐 充氏)
人事部には、もう1つ悩みがあった。それは、退職者への対応だ。飲食業界は一般的に退職者が多いと言われているが、法令では、退職者には退職後1か月以内に源泉徴収票を渡さなければならないとされている。退職後は確実に手渡すことが課題となっていた。
これら2つの課題を解決するため、元気寿司では給与明細書配付のWEB化を検討することになり、「i-Compass WEB給与明細」が導入されることとなった。

オアフ島の商業施設にある「元気寿司」。観光客や地元の人たちで賑わう。


全席にタッチパネルを導入し、スピーディに商品を提供。「おいしい一皿を気持ちよく召し上がっていただく」ため、空聞づくりにも力を入れている。
給与明細書と社員割引クーポンの同時配付がWEB化の課題に
元気寿司の給与明細書をWEB化する際、必須の要件となったのが、以前から給与明細書と同時に配付されてきた社員割引券のWEB化だ。
これまで社員割引券の印刷は地元の印刷会社に発注してきたが、給与明細書の印刷は、袋とじにできる印刷機械を持つ東京都内の印刷会社に別途発注していた。
そのため毎月月末に各従業員の給与支払額が決定すると、個人ごとの給与明細書の印刷と袋とじを都内の印刷会社に、該当人数分の社員割引券の印刷を宇都宮市内の印刷会社に、それぞれ依頼していた。そして2種類の印刷物を店舗ごとに仕分けして配送センターに納品するという、煩雑な作業を毎月行ってきたのだ。
WEB化で給与明細書の印刷がなくなっても、この社員割引券の印刷が残ってしまっては、業務の効率化にはならない。給与明細書をWEB化するソリューションは他社製品にもあったが、そこが選定の決定打となった。
「i-Compass WEB給与明細」は、カスタマイズによって明細書と同時に社員割引券の配信もWEB化できたからだ。
「ソリューションの選択に関しては、i-Compass WEB給与明細以外の選択肢はありませんでした」と五十嵐次長は振り返る。

ユーザーの年酸層が16〜80歳のため、文字の色や大きき、入力方法を工夫した。
コロナ禍の三密対策にもWEB化が有効な手段に
2018年から1年間ほど情報収集と検討を重ねた同社は、2019年9月、正式に「i-Compass WEB給与明細」の導入を決めた。そして、2020年1月から実運用を開始している。このタイミングはその後迎えたコロナ禍で、大きな意味を持つことになった。
「パート勤務の方が、自分の休みの日に給与明細書を取りに来る必要がなくなったため、給与振込日に事務所内が密になることを防げています。導入前には想像できなかった、コストには表れていない大きなメリットです」(五十嵐次長)
またこれまで、何らかの事情で店長から給与明細書を直接渡されなかった従業員から、「給与明細を自宅に郵送してほしい」という電話が、本社にかかってきたこともあった。さらに給与明細書と源泉徴収票の再発行に関する本社への電話が年間で500件以上もあったという。
「i-Compass WEB給与明細の導入によって、そうした電話も一切なくなり、ほかの業務に集中できるようになりました。心理的にも快適になっています」 (五十嵐次長)
また給与明細だけでなく、オンラインで様々な社内通達も確認できるという、新たな導入メリットもある。
「今後はパートやアルバイトで勤務している従業員にも、人事部だけでなくほかの部署から様々な情報を発信できます」(人事部 人事課 齊藤幸花氏)
給与明細書のWEB化によって、オンラインで全従業員に同じ質と量の情報を発信できる。対応が難しいと言われている飲食業において、働き方改革導入の一歩にもつながっていきそうだ。

人事部 次長 五十嵐充氏

人事部 人事課 齊藤幸花氏