新事業の業務移管により月間の発注件数が1000件に
太陽電池パネル・モジュールの性能試験に使用されるソーラシミュレータ(人工的に太陽光に近い光源を発生させる装置)やキセノンランプなどの光源を使用した光学機器、こうした機器類に使われる各種部品、ユニッの製造、販売を行っているワコム電創。同社では2015年9月、大手メーカーからの業務移管により、UV照射装置の製造という新事業をスタートさせた。
この新事業により、仕入先への平均月間発注件数が一気に増加。当社は発注の大部分を移管元である大手メーカーが行っていたが、徐々に発注業務も同社が引き継いだ。そのため事業開始当初は月30件だった部品や各種ユニットの葉中が、半年後の2016年4月には1000件にまで膨れ上がることが確定していた。
「当初、社内での発注は必要書類を添付したメールを、各取引先に直接送信する形をとっていました。また各社からの請求金額などは、会計システムに手入力してデータを蓄積していました。しかし取引件数が1000件にもなると、こうした対応には限界があります。そこで、発注業務をシステム化することにしたのです」
そう語るのは生産管理部 生産管理・資材調達Gr 新井隆一氏だ。
インターネットなどでEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)システムの情報を収集し、検討を開始。業務移管元企業が導入しているシステムも候補に挙がったが、導入しているシステム構築に時間がかかり過ぎる事がネックになった。
そんな時、目にとまったのがDAiKOのEDIシステム『EdiGate/POST』だ。これは低コスト、短納期でEDIを導入できるクラウド型のシステム。インターネットで利用できるため、仕入先にもシステムを導入してもらうなどの負担がなく、スムーズに取引をスタートさせられる。
ホームページの製品説明がとても分かりやすいと感じた新井氏は、「実際の操作もわかりやすいのでは」と思い、DAiKOにコンタクトをとったという。
そして他のシステムと比較検討をし、採用を決定したのは2016年3月のことだ。
採用の決めては、パッケージシステムで短期導入が可能なこと、導入事例が豊富で安定稼働が見込めること、操作性の良さにあったという。
準備期間わずか1か月のスピード導入
4月からの発注業務の完全移管に向けて、出来る限り最短で導入したいとの思いが同社にはあった。そこでパッケージシステムである『EdiGate/POST』に、最小限のカスタマイズを加える形で導入準備は進められた。
「引き継いだ取引先なので、スムーズに弊社の発注業務に対応してもらえるよう、帳票類のフォーマットは移管元企業の仕様に近いものにしました」(新井氏)
社内では初のEDIシステム導入だったが、機能をかなり絞り込んだためシンプルな構成にした。そのため、導入準備に要したのはわずか1か月。新たにシステム要員を増員するといった必要もなく、スムーズに準備は進み、2016年4月『EdiGate/POST』が稼働を開始した。
実際にシステムが稼働し、同社にはどのような効果がもたらされたのだろうか。
1つ目の大きな変化は会計システムとの連携により、原価管理が正確かつスピーディに行えるようになったことだ。以前は発注した内容を会計システムに手入力してデータを蓄積していたため、 入力するまでのタイムラグや入力ミスが発生し、正確な原価がスムーズに出ないこともあった。しかし現在は、EDIに入力した内容をそのまま会計システムに転用できるようになったため、タイムロスなく正確な数字を把握できるようになったという。
実際に新システムを使用して発注業務を行っている生産管理部 生産管理・資材調達Gr 小川雅子氏によれば、「1社ごとにメールで送信いていた見積り依頼などが、システム上で一括送信できるようになったことで、業務の効率化を図れたのも、嬉しい点」だという。
また取引先はもともと移管元のEDIシステムを使用していたため、見積りや納期の回答がメールで依頼していたときよりも格段にスピードアップしたという。
「見積りや発注が短時間で行なえるで、製品自体の納期短縮にもつながり、顧客満足度向上にも役立っています」(新井氏)
操作性がよく、誰でも使いこなせるのも大きなポイントだという。以前は発注業務には専任スタッフ2名をおいていたが、現在は部門全員がいつでも業務を行えるようになり、専任スタッフは必要なくなった。
さらにこれまでは複数出力していた部品に同封してもらう注文書などの帳票類を1枚にまとめることで、紙の使用量も抑えられるようになったという。
『EdiGate/POST』により、さまざまな効果が同社にもたらされているのだ。
経営層も納得の導入効果
稼働から半年以上が経過しているが、社内のシステムに対する評価は非常にいい。経営層も、新システムを高く評価している。
「省力化を図り、ミスを減らすことがシステム導入の大きな目的でしたが、これらは見事に果たされています。さらに原価管理が正確に行えるようになり、経営面から見ても非常に満足のいく結果となっています。これまで大量発生の経験がなかった弊社でも、スムーズに業務が回転していることに安堵しています」
そう語るのは取締役兼執行役員 生産管理部部長 辻村正之氏だ。
帳票類のフォーマットを以前の仕様に合わせたこと、操作性のよさなどから、取引先からも好評を博している。同社では、今後はシステムの機能をさらにパワーアップし、今以上の効率化を図りたいと考えている。
例えば見積り依頼を各社に一斉送信した場合、各社からの回答もシステム上で一括で確認できるようになっている。しかし現状は部品コードだけが表示されるため。どの仕入先からの回答かが分かりにくい。そこで社名も表示できるようカスタマイズをしたいという希望が現場から出てきているという。
「こうした小さな工夫の積み重ねが、業務の効率化には重要です。DAiKOは豊富な導入事例を持っているだけに、こうした希望にもスピーディに的確に応えてくれるので非常に頼りになります」(新井氏)
製造業にとって部品やユニットの調達は非常に重要な部分だ。1つでも足りない部品があれば、それはそのまま納期遅れに直結してしまう。それを回避するのに役立つのがEDIシステムなのだ。
新システム『EdiGate/POST』と、DAiKOのスタッフは、ワコム電創の新事業をこれからも陰ながら支え続けていく。