グループ内での独自システム導入を本社と交渉
スウェーデンに本社を置き、325年にもわたり世界に向けて農林・造園機器を提供するハスクバーナグループ。その一員であるハスクバーナ・ゼノアは、製品を製造するにあたって国内外を含めた幅広いサプライヤーから、各種部品を調達している。調達先は日本国内のサプライヤーが7割、残りの3割が中国やインドなどのアジア圏から米国、北欧までを含む海外のサプライヤーだ。
同社では以前から、部品調達のためにEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)システムを導入していた。しかし、以前のシステムは開発時期が古く、PDFファイルが表示されなかったり、最新のブラウザを使うと印刷ができなくなるなど、システムの陳腐化による様々な不具合が発生していた。しかもシステムを開発したベンダーもサポート契約を終了してしまい、トラブルのたびに社内で一つ一つ対応しなければならなかった。
そこで部品調達を担当する購買部では、新システムへの移行を検討し会社に提案。社内では承認されたもののハスクバーナグループ本社からはグループ内でのシステム統一の観点から、スウェーデンの工場で採用しているEDIシステムを導入するよう指示が出た。いったんは海外製EDIシステムを導入テストしたものの、日本の商習慣に合わない部分も多く、使い勝手に問題が多かったことから、再度日本製システムの導入をグループ本社に相談することにした。
新たなEDIシステムについて常に提案を続けてきた購買部の藤田江里穂氏は、「日本だけ別システムを導入することに関して、ハスクバーナグループの反対がとても大きいものでした。そのため、数か月かけて日本の商習慣などを電話会議で説明しました。こちらの意見に納得してもらうまでには1年以上かかりました」と、当時の苦労を振り返る。

本社工場。国内外から調達した部品がここで製品となっていく。
早期に導入できる使い勝手の良いシステムが決め手
新システムの導入にあたっては、複数のベンダーの提案を比較した。この時、ハスクバーナ・ゼノアが最優先したのは導入スピードだ。以前のシステムはミラーリングの機能も不安定になり、バックアップも取れない状態になっていた。購買部・生産管理課の調達業務担当者は口を揃えて「部品の調達は日常的に発生する基幹業務です。それが止まると製造工程に大きな影響を与えてしまい、全社に波及します。明日システムが止まったらどうするかという、リスクヘッジを前提に業務をこなす日々を送っていました」と語る。DAiKOから早期の導入が可能で、ユーザーインターフェースも以前のシステムに合わせられるという提案を受けると、迷わず「EdiGate注文EDI」の導入を決定した。
最終的にグループ本社から別システム導入の承諾が得られたのは2016年末。年明けの2017年1月からすぐにシステム導入プロジェクトを立ち上げた。
「最初にDAiKOから提示された納期は6か月だったのですが、1日でも早く安定したシステムを使いたいと思い、ムリを承知で5か月導入をお願いしました」(プロジェクトリーダー大塚香苗氏)。DAiKOはその要望にサプライヤー側のUIの作り込みを優先させることで応え、早期の導入と稼働を実現させた。

本社エントランスに飾られた製品。

品質の高さに定評があるゼノアブランド。
新システム導入によって全社的なキャッシュフローも改善
また、以前のシステムにはなかった新機能「納期回答」も搭載されている。発信した注文情報に対して、サプライヤーが納期に応えられるか否かを回答してもらう機能だ。以前は納期に関する電話やFAX、メールなどがひっきりなしに届いていたが、「納期回答」機能によってその対応が激減した。履歴も残るので、後からFAXを探して確認するなどの作業もなくなった。
また、新システムの導入がサプライヤーとのコミュニケーション向上にもつながるという、意外な効果も見られた。
「システム変更の折に個別に説明会を行なったのですが、顔を合わせる機会の少ないサプライヤーから様々な意見を伺うことができ、コミュニケーションがとりやすくなりました」(大塚氏)
購買部・生産管理課の業務効率が改善されリードタイムが縮まると在庫が圧縮され、廃棄する部品が減る。人件費や郵送費などの削減も実現するとともに、適正価格での調達も可能になった。こうしたことから、キャッシュフローも大幅に改善された。今回のシステム導入は、単に古いEDIを入れ替えただけでなく、全社的な業務改善にもつながっている。こうした効果は経営層にも認められ、2018年3月には「EdiGate注文EDI」の導入プロジェクトチームが社長表彰を受賞した。
調達支援のみにとどまらず、同社の業務改善を担うシステムとして期待されている「EdiGate注文EDI」。その期待に応え、今後も縁の下の力持ちとして同社を支えていく。

システム導入プロジェクトに携わった購買部・生産部メンバー。