現在、製造業では「設計の標準化」という流れが起こっています。しかし、個別受注生産における設計の標準化は困難といわれています。
今回は「設計の標準化」が進まない原因と解決策をご紹介します。
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個別受注生産で「設計の標準化」が進まない原因
繰り返し生産と比較すると、個別受注生産の製造業は設計の標準化が進めにくい傾向にあります。その理由は、案件ごとに異なる仕様、類似品を一部変更しそれを不定期に繰り返す生産形態にあります。
そのため以下のような課題が発生しやすくなっています。
設計業務が属人的になっている
顧客の要望に応じて設計・購買・製造する個別受注生産において、設計の仕様変更が頻繁に起こり、その都度設計をし直し、そのノウハウ自体の管理が煩雑になりがちです。結果、その案件に携わった人しか設計上の注意点や改善点を把握できておらず、同時にナレッジや経験が積みあがらず、ますます属人化が進んでいきます。
受注した案件に合わせ、毎回図面を書かなければならず、たとえ類似する工程があるものに関しても、同じケースで悩んだり、同じ失敗を繰り返してしまったりと非効率的な設計業務を引き起こしてしまいます。
間接業務の工数が大きく、設計業務に支障がでている
設計部門において、頭を悩ます間接業務が「情報検索工数」と「伝達工数」といわれています。個別受注生産の製造業においては、部品や関連図書の管理が煩雑になりがちのため、情報検索に膨大な工数がかかっています。また、設計変更が発生する度に、製造部門や購買部門に共有をしなければならず、その共有業務に忙殺される傾向にあります。
これらは、個別受注生産企業だからこそ、顧客の要望を叶えるべくゼロから仕様を設計する「設計(図面)中心」のものづくりが定着していることにあります。このような形態の中で標準化を進めるために、個別受注生産の企業は、「設計(図面)中心」のものづくりから「部品表中心」のものづくりにシフトをし、標準化を促進する必要があります。
設計の標準化のために取り組むべきこと
これらの課題は、顧客の要望を叶えるべくゼロから仕様を設計する「図面中心」のものづくりが定着していることにあります。これからは、個別要求に対応しつつモジュール(標準)化の推進が必要です。具体的な取り組みとして以下の5つがあげられます。
- 利用頻度の高いユニットやアセンブリを見つけ、人の判断による穏やかなマスタ化を行う
- 設計部品表を流用することで、設計工数を削減しベテラン設計者のノウハウを継承
- 設計変更時の情報をリアルタイムで伝達できる仕組み
- 図面/部品表出力などの事務作業を省力化
- データの一元化により、部品や関連図書の検索工数を削減
これらの取り組みは「部品表中心」のものづくりにシフトをすることで、実業務を行いつつ、理想的な生産業務に近づく段階的な標準化を推進することができます。
部品表中心のものづくりへのシフト
「部品表中心」のものづくりにシフトするためのステップをご紹介します。
マスタ化・BOM化から始める
「部品表中心」のものづくりにシフトさせるためにやるべきことは、図面をデータで残し、そのデータを探すことができる環境を整備することです。こうしたマスタ化・BOM化が定着していくと、最終的にモノづくりはそのBOMを流用できるようになります。
そのために必要なことは、「約束事(ルール)」をしっかりと決めることです。 設計によっては同一の部品でも様々な表現の仕方があります。別の名前で表現するケース、カタカナの半角全角、スペースの有無、スペースや・の混在。これらに対して言葉の定義を決める必要があります。
ルールを決めることがマスタ化の第一歩で、これをしなければ先には進めません。
関連する情報の一元化をする
次にマスタ化と同様にデータの一元化を行います。これは、データが自分のパソコンの中(ローカル) にだけ残った状態になり、他の人が見られない状態から脱却するということです。データを入れる仕組みを作っても、実行をしなければ意味がありません。そのデータをきちんと検索できるように、データの入れ方・名前の付け方もルール化する必要かあります。
下図のように、部門ごとに分かれている項目をデータベース内にそれぞれ格納する必要があります。
情報の滞りをなくし一気通貫した管理
営業部門はSFA、設計部門はCAD、PDM、そして資材担当は発注するためのシステムというように、それぞれが独立したシステムを持っているケースがあります。このようにバラバラのシステムを使用し、その間を連携させるために人員を割いている可能性があります。
このような場合、途切れはしないものの「タイムラグ」や、「入れ間違い・ 漏れ・未入力」などによって活用できないデータになってしまいます。基本的には製番という番号で全てがルール化されていれば一気通貫で管理ができ、そのデータを活用できる土台にもなります。
このように、一気通貫で管理をすることで、 各業務を横断した情報管理と対応速度の向上を図ることができます。
部品表中心のものづくりへのシフトは「段階的」に
マスタ化できるものからデータ化していく
前述しましたが、「部品表中心」のものづくりにシフトするためには、実業務を行いつつ、理想的な生産業務に近づく段階的な標準化を推進することが大切です。必要なとこから部品・構成・工程をマスタ化し、緩やかな部品表の定型化を進めていくことが大切です。
まずは、100%BOM化ではなく、ある特定の機能が集まったBOM化がゴールだといえます。
今必要なのは「ハイブリッド生産管理」
生産管理においてハイブリッドにするメリットとは、量産と個別のどちらにも対応できるという点です。一から全部をお客さま要件に従って作っていく個別受注設計生産ですが、今のキャパシティだけでは、求められている量は作れないので、徐々にハイブリッドに移行するべきです。
QCDにおいても、同じ部品を何度も使えば品質が上がっていくはずです。 同じモノが繰り返し使われ、その中で改良が加えられる生産管理を実現していきましょう。
ハイブリッド生産管理を実現するrBOM
当社では、以上のような部品表中心のものづくりを見据えたシステム「rBOM」を提供しています。この「rBOM」に、マスタ化できるデータを蓄積させ、各部門と連携することで、仕様決定のスムーズ化、設計情報の非属人化による品質を安定させることが可能となります。
このように、より緩やかに部品表を定型化し、ハイブリッド生産管理を実現し、設計の標準化を支援しております。
ご興味のある方、「rBOM」について詳細を知りたい方は、ぜひ下記より資料をダウンロードいただき、貴社の設計の標準化推進にお役立てください。
また、下記記事では、設計を大幅に効率化する「モジュール化」もご紹介していますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。