生産管理 基礎知識

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いま、製造業が「3D設計」を推進すべき理由 ~DXのカギとは?

いま、製造業が「3D設計」を推進すべき理由 ~DXのカギとは?

DX推進が課題として認識されるようになってしばらくが経ちましたが、いまだにDX推進を実現できている企業は多くありません。DXといってもその手法は多岐に渡りますが、なかでも製造業では3D設計と呼ばれる技術を導入することが有効です。
今回は、そんな3D設計について解説します。

製造業における近年の状況変化

VUCAの時代、不確実性が高い市場

製造業をとりまく現代社会の状況は、VUCAの時代といわれるように急速に変化しています。

例えば、近年の新型コロナウイルスの感染拡大、ロシア・ウクライナ情勢、米中関係悪化など、昨今起きている変化のなかでも特にわかりやすい例だと思います。
実際に、製造業ではそれらの煽りを受けて半導体をはじめとする部素材不足に陥ったり、電気・ガスなどのエネルギー価格が高騰してコストが増大したりと、さまざまな影響を受けているかと思います。
「予定通りのものがつくれなくなった」 「資材調達先を切り替えることになった」 「原価が高騰して価格改定せざるを得なくなった」 といった企業も少なくないでしょう。

今後もこのような新たな感染症や経済的・地政学的な変化はいつ・どのようなものが起きるかわかりません。まさに現在は不確実性の時代であるといえます。

これからの製造業に求められる変化

こうした予測困難な時代において、製造業が取るべき戦略は企業変革力の強化だといわれています。
企業変革力とは、自社に影響する環境がどのように変化したとしても、それに対して素早く・柔軟に対応できるように自己変革するための力のことです

企業変革力をあげるための取り組みはさまざまですが、なかでもその強化するにあたってデジタル化が果たす役割は大きく、特に設計力強化という観点では3D設計やシミュレーションを使った製品開発の高速化が有効です。

「製品の品質とコストは、その80%が設計段階の取り組みで決まる」といわれるように、新しい技術を積極的に取り入れて、まずはここを強化していくことが不確実性の時代を生き残る鍵となります。

設計力を強化するための鍵、3D化

設計力の強化とは、具体的に何をするのか

では、実際にどのようにして設計力を強化していくのかというと以下3つの推進があげられます。

1. バーチャルエンジニアリング
バーチャルエンジニアリングとは、企画・設計段階から製造に至るまでのプロセスをデジタル化して、仮想環境上で検証テストまで実施してしまう手法です。
年々進化をし続けている3DCAD、CAM、CAE、VRといったデジタルツールやデータを活用して、業務効率化を行います。バーチャルエンジニアリングを推進することで、設計ミス削減、開発期間短縮、開発コスト削減などの効果を得ることができます

2. フロントローディング
フロントローディングとは、いままで後工程で行われていた作業を初期段階に前倒して進めることをいいます。
例えば、製造中に不具合が発生した場合、それを修正するためには製造ラインを停止したり金型・設備などを調整したりといったことが必要になるため、大幅なコストがかかってしまいます。そこであらかじめ品質の作り込み・検証に力をいれて、製造開始後の手戻りを防ぐのがフロントローディングです。
前工程にリソースを集中させれば、途中で発生した状況変化にも素早く対応できるようになります。

フロントローディングの具体的な進め方としては、CAD、CAM、CAEといったデジタルツールの下支えによって、DR(デザインレビュー)や検図といった前工程の精度を高め、製造段階での手戻りを減らしていく方法が有効です。

3. ベテラン設計者の技術継承
また、ツールや仕組みによる設計力強化も必要ではありますが、設計を行う人材そのものの強化も当然ながら重要な課題です。
「人材育成による設計力強化」という観点では、ベテラン設計者の技術・ノウハウを若手に継承していくことが有効な打ち手となります。そこに役立つのもデジタルツールの存在です。

これまでは口伝でノウハウを伝えたり、設計書や実務を通じてスキルを見せて若手がそれを吸収したり…という方法でしか継承がされていませんでしたが、3DCADなどのデジタルツールにベテラン設計者の技術が記録されることで若手がそれを参照し・学習することができるようになったり、ベテラン設計者が退職した後でも培われたノウハウが企業のデータベースに溜まっていったりと、今後はデジタルツールを活用して技術継承を推進していくことも重要です。

なぜ3D化が必要とされているのか

バーチャルエンジニアリングを進めるうえで中核となるのが3D設計です。
2D設計では図面などの情報共有・伝達で齟齬やミスが起こりやすく、またフロントローディングを行おうにも既存の2D設計でのやり方だけではどうしても限界があります。近年では加工対象製品の製品構造が複雑化していたり、企業によっては顧客から3Dデータの提供を依頼されるケースが増えていたりもします。

3D設計に移行すると干渉チェックによって設計時のミスを削減でき、社内外の関係者との情報共有・意思疎通が格段にしやすくなります。複雑な設計であっても立体化されることで直感的に理解しやすくなるので、顧客や若手設計者がベテランの領域を理解しやすくなるのもメリットです。

設計を3D化したときのメリット

2D設計から3D設計に移行することで生まれるメリットは他にもあります。
例えば、各部門で発生している次のような問題の解決に役立ちます。

■営業部門
・過去の図面・仕様情報を探すのに手間がかかる
・仕様決定や見積りに時間がかかる

■設計・開発部門
・図面をはじめ情報が点在しているため探すのに時間がかかる
・見積り図面作成にかかる工数が大きい
・製造現場からの問い合わせ対応にかかる工数が大きい

■生産準備部門
・設計変更の情報が伝わってこない、情報共有が遅れる
・設計変更の情報がわかりにくい
・設計部門からきたデータを、自部門用に変換する作業で時間がかかる

■検査・保守部門
・紙ベースで業務処理することの手間が大きい
・技術伝承されないままベテランが退職してしまい、業務品質が低下する

3D化を妨げる問題と解決策

このように設計部門だけでなくさまざまな部門にメリットがある3D設計ですが、実際に導入するにあたってよく起こり得る問題があります。それが以下の3つです。

計画が甘く、3D化の目的を達成できない

綿密な計画を立てず、「とりあえず」で導入してしまったことで目的が達成できないパターンです。
何を目的とするのか・それをどう達成するのかという計画を明文化し、スケジュール化して推進しなければ途中で目的から外れてしまったり、導入プロジェクトが遅延・頓挫したりしてしまいます。
まずは、以下を明文化して関係者間で共通認識を持つことが大切です。

①何を改善や達成するのか
②どのように改善や達成するのか
③改善状況や達成状況をどのように測るのか

推進役がいないため、3D化が進まない

次に、「計画はあるけれども、はっきりと誰が推進役か決まっていないので滞りがち」というパターンです。
明確な担当者を設けないと、誰かがやってくれる…という雰囲気になり、思うように導入が進みません。対策として、推進チームとそのリーダーを決めて旗振りを行うか役割を決めることが大切です。

推進チームには、次のような役割が求められます。

・3D設計についてのエキスパートになる
自組織に3D設計を定着させるために、まずは3D設計ができることや使い方などを学び理解する。

・導入に向けて関係各所と調整する
自社に合ったかたちで導入できるよう、ベンダーとコミュニケーションを行いながら製品選定・仕様の検討などを行い、社内・ベンダーの間での調整を行う。

・運用ルールを策定する
自組織で3D設計を使う際の、具体的なルールを定めて手順書などを作成する。

・利用定着を働きかける
自組織で3D設計が定着するように、関係者に説明会などを行い理解を得たり、導入後に定期的に課題のヒアリングを行って運用方法の改善に取り組んだりする。

新しいやり方に抵抗感があり、3D化に移行しきれない

導入したはいいけれど、現場で「これまで通りのやり方で何が問題なんだ」「新しいツールに慣れるのが面倒だ」といった否定的な意見があがってしまい、その方たちがいまいち使ってくれないために組織に浸透・定着せず結局従来のやり方で進めている…というパターンです。

一方的に現場に導入を押し付けるのではなく、導入すると組織や現場にとってどんなメリットがあるのか、どうしていきたいと考えているのかといったことを、社内説明会や役職者からの情報共有で現場に理解・納得してもらうことが必要です。

もし3D設計で何ができるのか・自社ではどのように使うのがよいのか・失敗しないためにどのように導入を進めたらよいのかなど、悩むことがあれば専門のベンダーに相談してみることをお勧めします。

大興電子通信でも3D設計とその導入支援を行う「3D設計立ち上げ支援サービス」もご用意していますので、お困りのことがあればぜひご相談ください。ノウハウを持ったSEがアドバイザーとして参画し、早期3D設計立ち上げに向けた「計画立案」「環境整備」「初期設定」「運用ルールの策定」「合意形成」などの必要なサポートを行わせていただきます。


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田幸 義則
この記事を監修した人
入社後15年間、長野支店にてシステムエンジニアとして活動。
運送業、倉庫業のお客さまを中心に担当し、業務システム構築からインフラ環境構築等の経験を積む。
その後、製造業のお客さまも担当し、rBOM導入のプロジェクトにも関わるように。
16年目に現部門に異動し、rBOM全国支援の担当者となる。
現在はrBOMだけではなく、製造業全般のソリューション提案を手掛けている。
料理が趣味、これからお菓子作りにも挑戦しようか迷っている。
大興電子通信株式会社
ビジネスクエスト本部
インダストリー推進部
田幸 義則
【事例で学ぶDX】BOMを統合して経営を強化、コストダウンへ

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