製造業における効率化とは、手順や作業などの時間的コストを削減することを指します。
しかし、製造業では目の前の作業に追われ、生産の効率化がなかなか進まないこともあります。
では、製造業における効率化を実現するには、どのような方法があるのでしょうか?
本記事では、製造業における効率化の効果や生産効率を下げる5つの原因、効率化を実現する方法をご紹介します。
また、効率化のステップや製造業における成功事例についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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製造業における効率化とは
製造業における効率化とは、手順や作業などの時間的コストを削減し、生産性を高める仕組みをつくることを意味します。
業務を行ううえでのムリ・ムダを削減することで、現場スタッフ1人当たりの遂行できる作業量を増やし、より多くの成果物を算出することができます。
例えば、業務を行う流れや手順などのプロセスを改善したり、AIやシステムを導入して機械化を進めたりといったことが効率化の方法として挙げられます。
では、なぜ製造業において効率化が求められているのでしょうか。ここからは、効率化に重要な生産効率について解説します。
生産効率とは
生産効率とは、投入した資源に対する効果の割合です。例えば、1時間に10個の商品を生み出す設備があるとします。
この設備に改良を加えて、1時間で15個作れるようになれば、生産効率は上がります。
一方で、停電や不具合により停止時間が発生し、結果として1時間で8個しか作れなければ、生産効率は下がります。
このように製造業における生産効率は、人材や時間、コストを活用して、どれだけ効率的に商品やサービスを生み出せるかを示す重要な指標です。
生産効率を高めることで、企業の利益拡大や競争力強化が期待できます。
生産効率の計算方法
生産効率を計算するときは、「人作業での生産効率」と「機械設備での生産効率」の2つに分けて考えます。人作業の場合、計算式は以下の通りです。
一人あたりの出来高数=アウトプット数(出来高数)÷人数 |
一方で、機械設備の場合は以下の計算式を用います。
可動率=実可動時間÷総運転時間 |
このように、生産効率は人材や時間、コストなどのアウトプットとインプットの割合から求められます。
製造業が生産の効率を下げてしまう5つの原因
本来はもっと生産性を上げることができるはずなのに、以下の理由で生産性を下げてしまっているケースがあります。
- 人材不足に陥っている
- 標準化が進まない
- 作業ミスが多く発生する
- 在庫管理に問題がある
- 他部門との連携がうまくいかない
ここからは、それぞれの原因について詳しく解説します。
人材不足に陥っている
各工程に必要な人員が集まらず、製造ペースが上げられないことや、一部の工程に負荷がかかったりするケースです。
新しい人材がなかなか集まらず、離職率も高い状態だと、なかなかこの状況からは抜け出せないでしょう。
新しい人材が集まらない理由として、給与や待遇へ不満があったり、他社の方が業務内容に魅力があったりといったことが挙げられます。
標準化が進まない
誰でも同レベルのパフォーマンスを発揮するための標準化は、製造業で生産を効率化するためには必須です。
しかし、現状の工程を改善する手間が取れず、現場の従業員に依存する形で標準化が進まないケースがあります。
標準化が進まなければ効率化ができない他、ベテランと新人の間で品質の差が生まれ、ノウハウがなかなか蓄積されないという問題も発生します。この場合、ベテランの離職による生産性の低下は避けられません。
技術者の育成に課題を感じている企業さまは、以下記事を合わせてご覧ください。

作業ミスが多く発生する
標準化とも関連しますが、作業ミスが多いことも効率化を妨げる原因のひとつです。
作業ミスは工程を標準化したり、ベテランから若手への技術継承や、ミスを減らすための補助設備を導入することで対処可能です。このような対策を行わなければ生産の効率を下げてしまいます。
在庫管理に問題がある
各工程を滞りなく進めるためには不足のない部品調達が必要です。ただし過剰な在庫を抱えてしまわないためには在庫管理が欠かせません。
この2つがうまくいかないと部品の調達が遅れたり、必要以上の在庫を抱えたりする恐れがあります。
在庫管理の業務効率を向上させるためのポイントは、以下の資料で詳しく解説しています。
他部門との連携がうまくいかない
製造業では複数の部門に渡ってひとつの製品が作られていくので、部門間の連携は重要です。
しかし、データや情報の受け渡しミス、連絡のミスが発生すると、生産の大きなロスにつながることもあります。
主に以上のことが原因で、製造業における生産効率を下げています。
製造業において生産効率の向上が必要な理由
製造業において生産効率の向上が必要な理由は2つあります。
- 生産年齢人口の減少
- 競争の激化
それぞれの理由の背景について解説します。
生産年齢人口の減少
生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の人口を指し、生産活動の中心に位置する層です。日本では、少子高齢化・人口減少が進んでおり、それに伴い生産年齢人口も減少しています。
総務省によると、生産年齢人口は2065年に約4,500万人となる想定で、2021年と比較すると約30%減少すると言われています。そのため、今後一層1人当たりの生産量を増やして売上を担保していく必要があります。
また、特に製造業は人手不足に陥っており、1人当たりの負担が大きくなると、モチベーションの低下から離職・退職につながりやすくなります。そのため、製造現場の効率化は喫緊の課題となっています。
競争の激化
国内・海外問わず、他企業に対抗できなければ生き残り続けることは困難です。
特に近年はグローバル競争が激化しており、付加価値の高い製品を多く開発・販売しているグローバル企業と対等に戦わなければなりません。
日本の製造業が競争力を上げるためには、製品の研究・開発を進めながら、業務効率化で利益を得る必要があります。特に日本は生産性が高いわけではないので、改善することで企業成長が見込めます。
製造業における生産性効率化の3つの効果
製造業における生産性効率化の3つの効果は以下の通りです。
- 品質の担保
- コスト削減
- 利益の増加
生産効率の向上が製造業に与える影響について詳しく解説します。
品質の担保
効率の悪い生産体制ではミスが発生しやすく、製品の品質のバラつきが生まれます。生産を効率化できれば品質が安定するため、顧客満足度の向上につながります。
また、品質が安定的に担保できる体制づくりが構築できると、トラブルの発生によるイレギュラー対応が少なくなるため、その分の時間を削減できます。
空いた時間で、技術やノウハウの継承、研究・開発に力を入れることができ、今後の企業成長が見込めます。
特に、後継者がいないといった問題が発生しやすい製造業では、若手社員の育成に力を入れられる体制整備が今後の成長に影響してきます。
コスト削減
ムリ・ムダ・ムラを省くことでコスト削減につながります。削減した分は新たな設備投資や従業員への投資に使えるため、企業としてさらなる成長につなげることが可能です。
捻出したコストで、システムやツールの導入を行えば、人件費の削減も可能です。
人件費の削減は人口が減少している日本において取り組むべき事項であり、光熱費や交通費、研修費、教育費などその他の経費も削減できます。
利益の増加
同じ人件費の中で生産性を向上することができれば、より多くの成果を残せるため、利益を増加することができます。
先述した品質担保による顧客満足度の向上、コスト削減による新たな投資なども長期的な効率化につながります。
増加した利益分を従業員に分配できれば、働きがいを醸成でき、離職・退職を防ぐことが可能です。
製造業の効率化を実現する方法
製造業の効率化を実現する方法は、以下の5つです。
- 5Sの徹底
- マニュアルを整備する
- レイアウトの最適化
- 生産ラインの自動化や無人化
- 生産管理システムの導入
それぞれの方法について解説します。
5Sの徹底
製造現場の生産を効率化させる手段としてよく浸透しているのが、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つのSをまとめた「5S」です。
整理 |
必要なものと不要なもの(あるいは作業)をきちんと分け、不要なものを処分します。 |
整頓 |
必要な材料や機材を必要なときに取り出せるよう、ものを置くルールを定めます。 |
清掃 |
作業後にゴミや汚れを掃除する他、機材のメンテナンスもしっかり行います。 |
清潔 |
整理・整頓・清掃において常に清潔な状態を目指します。 |
しつけ |
これら4つのSをいつでも確実に実行できるよう、ルールを作り現場に浸透させます。 |
例えば、整理・整頓することで必要なものがすぐに見つかり、時間のムダを削減できます。また、清掃・清潔を維持することで、機械の故障や不具合を防ぎ、安定的な稼働が可能です。
このように、製造業において5Sを徹底することは、生産ラインの作業効率や安全性、品質の向上につながります。
マニュアルを整備する
マニュアルを整備することで、製造業の効率化を推し進められます。
特に作業手順や工程が複雑な場合は、明確なマニュアルを用意することで、工場内の安全性や商品の品質維持が可能です。
具体的には、イラストや図、写真を取り入れたマニュアルの活用が効果的です。
また、マニュアルを電子化して、タブレット端末などから視聴する方法なら、新人や経験の浅い従業員でも作業内容の理解度が向上します。
作成したマニュアルは、定期的に見直しを行い、最新情報を完備することで、現場教育の成果向上に貢献します。
レイアウトの最適化
製造業の効率化を実現するためには、作業場や設備のレイアウトを最適化することが効果的です。
特に生産ラインで人や設備の移動が複雑でムダが多い場合、工場全体の生産効率の低下に直結します。
例えば、従業員が最小限の移動で作業するために、フローショップ型のレイアウトが有効です。
フローショップとは、モノの流れや工程順に設備や人を配置する方法のことです。
まずは、作業員の動線をシミュレーションソフトなどから分析して、自社にとって最適なレイアウトを検討しましょう。
生産ラインの自動化や無人化
生産ラインを自動化・無人化すると、ヒューマンエラーを防ぐことが可能です。安定した生産速度で一定の品質を保てるため、製造業の効率化につながります。
例えば、部品の組み立てや搬送、仕分けなどの作業をロボットが代行することで、深夜帯や休日にも稼働を続けられます。
導入には一定の初期投資が必要ですが、生産効率が上がることで、長期的にはコスト削減や利益拡大が期待できます。
生産管理システムの導入
生産管理システムを導入すると、迅速にボトルネックを特定できるため、生産効率が改善します。
生産管理システムとは、デジタル技術を活用して各工程の進捗状況、設備の稼働率、材料の在庫管理などを一元管理できるツールのことです。
例えば、突然の需要変動が起きた場合、システムが生産計画を瞬時に調整して、過剰在庫のリスクを回避します。
また、他工場・他部署との連携がスムーズになり、情報共有や管理コストの削減につながります。
生産性向上を実現するための4つのステップ
生産性向上を実現するためには、こちらの手順を実践することが効果的です。
- 業務プロセスを見直す
- 業務の可視化を行う
- 業務効率化を助けるツールを導入する
- 設備レイアウトを改善する
製造業で生産性を向上させるための具体的な方法を、4つのステップに分けて解説します。
①業務プロセスを見直す
効率化のためにまずできることとしては、業務の流れや手順などにムリ・ムダがないか見直すことです。
プロセスを改善する際は、動作や工程の改善、段取り替えなどに注目することが効果的です。
■動作の改善
各作業において、動作に無駄がないかをチェックします。
例えば、手待ちの時間がないか、不必要に時間がかかっている作業はないか、担当者によって差の大きい作業はないか、そもそもそれは必要な作業かなどがチェックポイントです。
■工程の改善
複数の工程を経るラインでは、一部で作業が滞ってボトルネックとなると、その他の工程にも影響を与えて製品1つにかかる時間を示す「タクトタイム」が長くなります。
ボトルネックを探し、原因を解明して改善することでタクトタイムを短くすることが可能です。
工程を改善するためには、進捗状況の把握や生産計画に関する情報が、部署やチーム間で常に共有ができている状態、つまり工程管理の最適化を行うことが重要です。
工程管理の重要性や、適切に行う方法などは以下の記事からご覧ください。

■段取りの効率化
主に多品種少量生産においては、1つのラインや設備で多くの製品に対応するために作業内容を入れ替える「段取り替え」を行います。
段取り替えが遅いと生産のない時間を増やしてしまうことになるので、段取り替えの流れを見直し、止めなければならない「内段取り替え」から止めずに転換できる「外段取り替え」にシフトしていきます。
②業務の可視化を行う
業務フローや関与者、現在の進捗状況が可視化されていると、見直すべき業務を容易に探すことが可能です。
社内だけでなく、クライアントや外注先などに共有することで、煩わしいコミュニケーションを減らせます。
また、業務が可視化されていると、計画変更やイレギュラーに対応しやすく、期限・実行者・施策などの詳細情報を共有しやすいため、効率化を助けてくれます。
さらに、社内で明確なマニュアルを整備することにもつながります。
③業務効率化を助けるツールを導入する
上述した業務の可視化を行ううえで、ツールの導入は欠かせません。例えば、在庫管理・工程管理・入出庫管理・購買管理・生産管理など、さまざまなツールがあります。
エクセルやスプレッドシートを作成して手動で可視化を行う方法もありますが、より効率的なのはシステムやツールでの管理です。
機械で正確に管理できるため、人手による誤入力や入力漏れなどのミスを防いだり、計画の変更があった際に関与者にいち早く共有できたり、ムダなやり取りを減らせたりできます。
システム導入時は、「業務負荷を管理できるか」「複数のプロジェクトで横断的に管理できるか」「他システムとの連携が可能か」といった観点から検討すると、業務の効率化に役立ちます。
④設備レイアウトを改善する
生産ラインを最適に設計できていると、移動や運搬におけるロスを防ぐことができるため、機械設備をどう設置するかは製造現場の効率化に影響します。
特に製造業の場合は、フローショップ型のレイアウトと相性が良いと言えます。
現状の生産体制だとどのようなレイアウトが最適か、各工程における動作や各作業員の導線をシミュレーションソフトなどから分析・考慮し、よく吟味して工場のレイアウトを作ることが大切です。
製造業における生産効率が向上した成功事例
製造業における生産効率が向上した成功事例を3つ紹介します。
金属用金型メーカー
冷間圧造金型、冷間鍛造金型、フォーマー金型、超硬部品などの金具を製造するBtoB企業の事例を紹介します。
この企業では、5Sのうち整理・整頓・清掃の3Sに注目して、品質、安全、顧客サービスを向上させる「人づくり」に取り組んでいます。
具体的には、よく使う工具を壁掛けにして管理するアイデアや、消耗品のストックをパネルを取り付けて保管する方法などを実践しています。業界内のロールモデルとして、5S活動の周知にも貢献している企業です。
産業用電気機器メーカー
温度調節計をはじめ、様々なデジタル制御機器を製造する総合メーカーの事例を紹介します。
この企業では、IT導入補助金を活用して、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを導入することで、業務の自動化・無人化に成功しています。
具体的には、生産ラインの現場担当者が、材料の使用履歴や作業時間などの情報を、RPAツールに直接入力します。
RPAツールは、夜間に自動で情報集計や整理を実施するため、実質的に事務処理が無人化して、人件費が抑えられています。
自動車部品メーカー
主力製品である自動車フレームをはじめ、様々な自動車部品を製造するBtoBの企業の事例を紹介します。
この企業では、既存の生産管理システムに、3次元CADデータの送受信を効率化するツールを連携したことで、作業時間を従来の5分の1にまで短縮しています。
具体的には、仕入先とのEDI(Electronic Data Interchange|電子データ交換)が進んだことで、注文書の発行や納期の確認作業の負担が軽減しています。生産管理システムを最適化して、生産効率を向上させた一つの事例です。
作業効率を向上させて製造業の生産性を高めよう
製造効率の悪い部分があると、その工程だけではなくその他の工程にも影響を及ぼし、生産性の低下につながります。
現状維持の姿勢から脱却し、この記事でご紹介したような効率化を実施することで、品質の向上やコスト削減、企業の成長につなげることが可能です。
より効果のある効率化を実現するには、先述したツールやシステムの導入がおすすめです。
当社では、生産管理・購買管理・在庫管理などのシステムと連携できる「rBOM」を提供しており、企業さまの効率化を実現しています。
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