製造原価率とは、製造業の売上に直接的にかかった費用(製造原価)の割合を指します。
製造業では材料費が原価の多くを占めるため、増益を実現するためには、原価を削減して製造原価率を下げることが重要です。
今回は、製造原価率を正確に把握する重要性や業界ごとの原価の水準、原価を削減する対策方法についてご紹介します。
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製造原価率とは
原価率とは、製造業の売上に直接的にかかった費用(製造原価)の割合を指します。製造原価には、製品を作るための材料費以外に、労務費(製造において直接かかる人件費)、経費(工場の電気代や光熱費)、外注費なども含まれます。計算が複雑になるため、常日頃から数値を明確に把握・管理しておく必要があります。
製造原価について詳しく知りたい方はこちらからご覧ください。
製造原価率の算出は、売上向上のために欠かせません。現状かかっている製造原価を算出することで、どこの原価を減らすべきか、製造工程のどこに課題があるのかを把握・改善することができます。
特に原価の効率化を推進したい際に、原価率の算出が役立ちます。業種によって、原価率の水準値が目安として公表されているので、その水準と比較して分析を行うことで、原価改善を行えます。
では、原価率の水準はどのくらいなのでしょうか?次章で原価率の目安をご紹介します。
製造業における原価率の平均水準
製造原価率を改善するには自社の数字を分析し、課題を解決することが大切ですが、業界の平均水準を把握することも有効です。
2021年の統計データでは、製造業の原価率が80.8%で、卸売業が87.6%、小売業が71.2%となっています。
製造業では、原価のうち材料費が他業種と比較して多額となる傾向にあり、多くのケースで40~60%程度を占めます。また、機材への初期投資や工場の運用費などがかさむことも多く、減価償却費などにより経費を削減しにくい特徴もあります。
製造業の原価率を計算する方法
製造原価率を下げるには、現在の製造原価率を正確に把握することが重要です。併せて、製造原価にはどの要素が含まれているかを把握し、どの要素に改善の余地があるかを分析することも重要です。本章では、製造原価率の計算方法について解説します。
ステップ①:製造原価を算出する
原価率を計算するために、製造原価を割り出す必要があります。製造原価を算出する計算方法はいくつか存在しますが、基本的には先述した材料費・労務費・経費の合計で割り出します。未完成の製品を除外して計算する必要があるため、当期分の製造原価を算出する際は、以下のように計算式を使います。
●当期の製造原価=総製造費用+期首の材料費+仕掛品の棚卸高-(期末の仕掛品+未使用材料費)
より具体的な製造原価の計算方法については以下記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。
ステップ②:原価率を計算する
原価率は以下の計算式で求めます。
●原価率=原価÷販売価格×100
原価率が100%未満であれば黒字であり、さらなる増益を目指す場合は原価率の削減を目指します。前述した原価率の水準を目安として原価率を分析するとよいでしょう。
次章では、原価率を削減するためにどのような取り組みができるのかを解説します。
製造原価を削減する取り組み
製造原価を削減するためには、現状の製造原価を把握し課題を分析することが重要です。ここでは、よくみられる課題とその改善策についてご紹介します。
原価を大きく占める材料費を見直す
原価の40~60%程度を材料費が占める製造業では、材料費に課題が発生していることが多々あります。その中でも、「材料費の見直しを行っておらず必要以上の費用を計上している」というようなケースが考えられます。材料の見直しを行っていない場合は、定期的な見直しを実施し、常に材料費を最適化できる体制を整えます。
材料費を削減したいときは、材料の仕様や加工方法を変更できないかも検討できます。小さい材料に替える、数を少なくする、素材を変更する、より効率の良い加工方法に変更する、加工する範囲を小さくするなどが可能であれば、材料費の削減につながります。
新たな仕入先を探す
材料費といった費用を見直す場合、「他に安価で購入可能な仕入先はないか」を考えることも可能です。仕入先を変更する際は、検討に多くの時間と手間を費やすため、固定化してしまう企業さまが多いですが、素材が安ければ売上が減ってしまったとしても、利益を維持することができます。
そのため、業務の効率化を推進しながら、仕入先を検討できる時間や余裕を作ることをおすすめします。
製造業における効率化に課題がある企業さまは、以下記事を合わせてご覧ください。
効率化が進まない5つの原因と実現するためのステップをご紹介
仕入れ量を見直す
常に安定的に売れる商品に関する仕入れ量が多い場合は、大きく影響しないですが、売上の変動が起きやすい商品に関わる仕入が多いと、さまざまなデメリットが発生します。在庫を維持するための費用がかさばってしまったり、キャッシュフローが減ってしまったりと気づきにくい箇所で影響を受けてしまいます。
そのため、原価率が高い場合は、仕入れ量のコントロールを行うなど仕入れ量を見直す必要があります。
売値を見直す
材料費が高騰している場合、原価を削減することは難しいため、販売価格を見直すことが必要になります。利益が出ず、社員に還元できなくなると、従業員のモチベーションの低下や離職につながります。そうなると、サービス提供もままならなくなってしまうため、市場の価格と大幅に違いが出ない範囲で、売値を見直しましょう。
販売価格を定める際は、仕入れ原価に利益を乗せたり、品質の良さを売りに価格を上げたり、名のある大企業の販売価格を基準にしたりと、いろいろな方法があります。
製造工程のムダを削減する
製造工程に多くのムダが存在することも、製造原価率が高い原因として挙げることができます。例えば、各工程の進捗に差があるために工程の一部が滞り、仕掛品の数が増大する、後工程が手待ち状態になるなどのムダが考えられます。
製造工程のムダを特定するには、正確な原価計算を行う必要があります。最終的な原価だけではなく、どの工程でどの程度工数がかかっているのか、製造途中であっても現時点の確認をすることで改善すべきムダを特定することが可能です。
ある工程にムダがあり仕掛品や手待ち状態の増加につながっている場合、作業量や作業人数の調整、トラブル対処の最適化でスムーズな生産ラインに修正することが可能です。
特にトラブル対処は、不良品や事務処理のミスがあるたびに対処するのではなく、同じトラブルが2回以上発生しないよう改善を行うことが重要です。現場によっては、トラブル対処を行うことが日常業務となり、トラブルが少ない日は手待ち状態が増加するというムダが発生しています。従業員にヒアリングを行うなどして改善すべきポイントを見直すことが重要です。
不良在庫を減らす
原価率を下げるためには、不良在庫を出さないように対策する必要があります。
そのために、必要なのが在庫管理です。定期的な在庫管理で、古い製品から販売できているか、長期保管している在庫がないか、保管場所は適切かなどを把握できます。在庫管理がおざなりになっていると、商品の価値が下がってしまい、ロスにつながります。
また、不良在庫が出てしまっている原因には、人的ミスや不適切な業務フローなども挙げられるため、マニュアルを作ったり、業務フローを可視化したりするとよいでしょう。
製造工程を可視化する
生産管理システムを導入し、各工程の状況を可視化することも有効な改善策のひとつです。先述した通り、可視化は不良品の削減にもつながります。生産管理システムでは部品表や設計図、製造工程などを分かりやすく可視化し、全ての部門で情報をリアルタイムに共有することが可能です。これにより、可視化による迅速なリスク対応、新たな設計を行う際の製造部門への影響の正確な判断、他部門の状況を把握することによる無理のない製造フローの最適化などが可能となります。
生産管理システムの概要や導入メリットは以下記事からご覧ください。
業界水準や計算方法、原価を削減する取り組みをご紹介
製造原価の削減には、生産管理システムがおすすめ
製造業で増益を目指すには、製造原価を正確に把握し、改善点を分析して原価率を削減することが重要です。製造原価の把握や改善点の洗い出しには生産管理システムの導入がおすすめです。
大興電子通信では、原価管理に加え、製造原価の削減に重要な在庫管理、生産管理などさまざまなシステムを連携できる「rBOM」を提供しています。進捗状況や生産計画を可視化することで、原価を削減できるだけでなく、他部門との連携がスムーズにできたり、迅速にトラブルに対応できたりメリットを多く享受できます。
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