生産管理

 

製造業の今後はどうなる?生き残るために取るべき3つの対応策

製造業の今後はどうなる?生き残るために取るべき対応とポイントとなる生産管理

ニューノーマルと呼ばれる昨今、試練に直面している日本の製造業。2021年に発行された経産産業省のレポートでは「製造業の競争力低下」が指摘されており、2022年のレポートでも新たな事象が事業に影響を与えている様子がうかがえます。製造業が今後生き残るためにはどのようなことが必要でしょうか。本記事では、ITによる業務効率化や働き方、生産管理の見直しなど、今後対応が求められる問題と対応策をご紹介します。

製造業の業績動向

まずは、経済産業省製造産業局が2021年9月に発行されたレポート「製造業を巡る動向と今後の課題」を見てみましょう。このレポートによると、2021年1~3月期の国内製造業の業績は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年前半から回復傾向にあるものの、感染拡大前の水準に戻っていないことが述べられています。

参考:製造業を巡る動向と今後の課題 – 経済産業省

2022年版『ものづくり白書』では、2020年4月以降の業況について、「11 年ぶりの低水準」としており、「中小企業においては、製造業・非製造業ともに大企業以上の悪化幅」とレポートしています。

その後、「同年第3四半期に入ると、製造業・非製造業ともに改善し、2021 年以降も上昇傾向だったが、2022 年第1四半期には、大企業製造業及び中小製造業は7四半期ぶりに悪化した」とも記載があることから、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は回復傾向にあるものの、今後も完全な回復までには時間を要することがうかがえます。

さらに同資料の「製造業を取り巻く社会情勢変化」によると、事業に影響しうる事象として「原材料価格の高騰(79.8%)」、「半導体不足(49.3%)」、「部素材不足(38.9%)」の割合が大きくなっています。依然として新型コロナウイルス感染症の影響も挙げられる中、2020年時にはなかった新たなトピックによって製造業の業績に影響が出ています。

参考:2022年版ものづくり白書 – 経済産業省

こうした状況から生まれているのが、グローバル・サプライチェーンの寸断といった新たな試練です。

製造業の今後と取り組むべき問題

今後:不確実性の高まりへの対応

ニューノーマルの時代の特徴として挙げられるのが、世界の不確実性の高まりです。この状況下でこれまでは安定供給を実現してきた製造工程の弱点が露呈している、といっても過言ではないでしょう。だからこそ、サプライチェーンの再構築や強靭化は各社喫緊の課題となっています。

歴史を振り返ると、1980年代前半、製造各社のサプライチェーンは国内で完結しており、ドメスティックな生産体制が構築されていました。そして、1980年代後半には製造工程のグローバル化が進み、一部工程を人件費が安価な海外の工場に移転するなど、国境をまたぐサプライチェーンが構築されました。しかし、昨今の状況下ではその一部が寸断されると、製造工程自体がストップしてしまう企業も見受けられます。そこで、平時のサプライチェーンが寸断された場合には有事の製造工程に切り替えるなど、今後は不確実性に強い生産体制の構築が望まれています。

有事であってもサプライチェーンが適切に機能するために必要な対策については下記の記事で解説しています。今後のためにも、ぜひご確認ください。

 

このようにサプライチェーンを構築し、不確実性に対応できる体制の構築が求められている製造業ですが、他にも問題があります。

問題①:DX化の遅れ

経済産業省が2018年9月に公表した『DXレポート』から数年が経過していますが、その推進状況は順調ではありません。2022年7月に公表された『DXレポート2.2』によると、「DX推進に取り組むことの重要性は広がる一方で、デジタル投資の内訳はDXレポート発出後も変化がなく、既存ビジネスの維持・運営に約8割が占められている状況が継続」していると記載されています。

このことから、DX推進に対する姿勢は積極的ではなく、また、「DX推進に対して投入される経営資源が企業成長に反映されていない」とも記載があることから、日本企業全体でDX推進が遅れていることが問題となっています。

参考:『DXレポート2.2』 経済産業省

問題②:人手不足

2022年版『ものづくり白書』によると、製造業を取り巻く社会情勢変化のうち事業に影響があるものとして3位に「人手不足(49.7%)」が挙がっています。少子高齢化が加速する日本では、あらゆる業界で人手不足が深刻な問題となっていますが、製造業も例外ではありません。

今後も労働人口全体が縮小していく日本において人手不足の解決を図るには、雇用のみならず多角的なアプローチが必要です。

問題③:技術承継の問題

優れた製造技術を保有する日本の製造業において、技術承継問題は深刻になっています。企業が独自に保有している技術や知見を共有することが求められていますが、前述の人手不足問題や人材の流動性の高まりにより、問題が浮き彫りになっています。

特に、人材の流動性については、これまでの終身雇用型制度が変化しつつある今、避けては通れない変化です。人材の流動性が高まると、せっかく技術を承継した従業員が別の企業に行ってしまい、技術が失われてしまう恐れもあります。

問題④:人件費の高騰

海外を巻き込んだサプライチェーンを構築している企業も多いですが、世界的な物価高の動きから中国やアジアを含む海外の人件費が高騰しています。また、日本国内の労働市場でも人手不足を理由に人件費の高騰が問題です。

こうした状況に対応するためにも、現場のみならず全ての部門が連携して生産性を高めるべく、「抜本的な改革」が必要とされています。

製造業が取るべき対応は?

では今後、具体的にどのような対応が求められるのでしょうか。大きな枠組みとして挙げられるのは、テクノロジーを活用した業務効率化と働き方の見直しです。

①IoT・ITを導入した業務効率化

IoTといったテクノロジーの活用は、一見大企業が向き合うべき課題に思えるかもしれません。しかし、労働力不足に直面する中小企業こそ、その対応が求められています。世界的にも生産工程の自動化を図る「FA機器」を導入することで、低コスト化・品質の安定化を実現することは新たなスタンダードになりつつあります。

こうした自動化・効率化の取り組みは将来を見越して進めることで、有事における製造工程の変更にも寄与します。生産・製造現場のあらゆる情報をデータベース化しておけば、どの原材料・どの工場で起きた出来事がどの製品に影響を及ぼすのか、速やかに把握して対処できるからです。そして、システムで対応できない部分に人間が注力するなど、限られた人的リソースでも効率的な対処が可能になります。

②ナレッジをデータとして蓄積

技術承継先がいない、技術承継をしても従業員が辞めてしまう・・・今後の製造業界ではこのような事象も発生してくることが予想されます。そこで、企業の技術やノウハウをシステムに蓄積することが重要です。

例えば、これまでマニュアルや手順書を見ながら行っていたピッキングや組み立て作業を、プロジェクションマッピング技術を用いることで視覚的に分かりやすく指示を行うことが可能です。

詳しい方法については下記の記事で図を用いて説明していますので、あわせてご覧ください。

③働き方を見直す

また、別の対応策が「働き方の見直し」です。工場の中には何十年も前から管理方法が変わっていないことも珍しくないでしょう。表計算ソフトや報告書ベースのコミュニケーションなど、ベテラン従業員に依存せざるを得ない管理を行っている限り、従業員の業務が効率化することはありません。

そして、他社や他業界で働き方改革が進めば進むほど、従業員にとってのワークライフバランスへの配慮は欠かせなくなります。人材の定着が生き残りの必須条件といえる今、働き方の見直しは今後必要不可欠なのです。では、業務効率化のポイントになるのはどの部分なのでしょうか。その生命線となるのが「生産管理システム」です。

まずは生産管理システムで業務効率化を

大興電子通信が提供する生産管理システム「rBOM」は、IoTやAIなど新たなテクノロジーの導入を見据えた製造業の現場に最適な仕組みです。また、各部門の非効率な業務を解消し、働き方の見直し・改善にも活用することができます。

例えば、rBOMの「リアルタイム統合部品表」を活用すれば、部品の一括管理を実現し、Excel管理からの脱却を図れます。入力作業自体を減らし、業務効率化が期待できるだけでなく、システムによるデータやノウハウの蓄積でベテラン社員に依存しない管理が可能となります。このような社員の負担軽減や属人化防止の実現から、ワークライフバランスに配慮した職場環境の構築につながります。

また、それぞれの部品がどの製品で使用されているのか速やかに特定できるため、平時から有事のサプライチェーンへの切り替えに伴う影響範囲の把握も容易です。不確実性が高い時代、新たな一手を打ち出したいとお考えの企業さまには、生産管理システムの利活用をお勧めします。

また、本記事に関連して、製造業の生産性が下がる5つの原因と5つの効率化ポイントもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

リアルタイムな進捗・原価把握を実現する
生産管理システム「rBOM」

詳しくは下記からご覧いただけます
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田幸 義則
この記事を監修した人
入社後15年間、長野支店にてシステムエンジニアとして活動。
運送業、倉庫業のお客さまを中心に担当し、業務システム構築からインフラ環境構築等の経験を積む。
その後、製造業のお客さまも担当し、rBOM導入のプロジェクトにも関わるように。
16年目に現部門に異動し、rBOM全国支援の担当者となる。
現在はrBOMだけではなく、製造業全般のソリューション提案を手掛けている。
料理が趣味、これからお菓子作りにも挑戦しようか迷っている。
大興電子通信株式会社
ビジネスクエスト本部
インダストリー推進部
田幸 義則
【事例で学ぶDX】BOMを統合して経営を強化、コストダウンへ

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