サプライチェーンリスクとは、製品の調達から販売までの一連のプロセスであるサプライチェーンが停滞・途絶し、全体の流れが止まってしまうリスクのことです。昨今、さまざまな要因によりこのサプライチェーンリスクが増大しています。
そこで本記事では、サプライチェーンリスクの発生による弊害と対策方法をご紹介します。
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サプライチェーンリスク増大の2つの要因
サプライチェーン(supply chain)とは、商品や製品が消費者の元に届くまでの「調達」、「製造」、「在庫管理」、「配送」、「販売」、「消費」といった一連のプロセスのことです。多くの企業や従業員が関与して取引のサイクルが鎖のように繋がっている様子を表しています。
また、サプライチェーンの供給全体を最適化させる取り組みのことをサプライチェーンマネジメント(SCM)と呼び、サプライチェーン全体の情報管理や共有を通して供給速度や収益、キャッシュフローの向上を目指します。
サプライチェーンマネジメントを実現することで得られるメリットについてはこちらの記事をご覧ください。

そして、サプライチェーンのどこかで供給が停滞・途絶し、全体の流れが止まってしまうリスクのことを「サプライチェーンリスク」と呼びます。
昨今、このサプライチェーンリスクが増大しています。製造や物流業界において、一連の流れが途絶えてしまうと他の企業や消費者にも影響が出てしまうため、重要な問題です。サプライチェーンリスクが増大する主な原因は以下の2点です。
市場および製品の多様化
従来の商品や製品の生産では”同じ商品を大量に生産し、大量に消費する”という手法が主流でした。しかし近年では、IT技術や製造技術の発展によって市場が成熟し、消費者のさまざまなニーズを再現できるようになりました。そのため、消費者ニーズの多様化に合わせて多様な種類の製品を生産するスタイルへと変化していきました。
その結果、昨今の機械工業では製品の種類を増やし、1品目あたりの数を少なく製造する「多品種少量生産」が主流となり、約7割の企業がこの生産形態をとっているとも言われています。
本来のサプライチェーンでは「在庫管理がしやすくなる」や「最適化することでリードタイムを短縮できる」というメリットがありますが、市場や製品のバリエーションが増えることで、複数の企業との取引が増えるため、管理が煩雑になりサプライチェーンリスクが増大してしまいます。
自然災害の増加や感染症の拡大
サプライチェーン最大のリスクとは、サプライチェーン内における一部の企業・拠点の業務が止まってしまい、供給全体の流れが停止してしまう点です。
企業の業務が止まってしまう主な要因は「物流体制の停止」と「生産体制の停止」です。
「物流体制の停止」とは、大雨や洪水、台風、干ばつなどの異常気象によって商品や製品を運ぶための港湾や空港、道路に影響が出てしまい、物流を行えなくなるケースです。近年は気候変動の影響で、世界的に異常気象が増加しているため注意が必要です。特に日本では巨大地震や津波の発生率も高いため、物流体制の停止によるサプライチェーンリスクが高くなります。
「生産体制の停止」とは、災害による港湾や空港、道路など物流への被害だけでなく、商品や製品を製造する工場自体に被害が出てしまうことです。災害による機械の破損や工場内の停電により電力が途絶えてしまい稼働できなくなるなどのケースがあります。
また、直近では新型コロナウイルス感染症の拡大によって工場内で勤務する従業員の出勤制限や工場閉鎖が起きました。
これらの要因によってサプライチェーンリスクは高まっています。次章では、実際にサプライチェーンリスクが発生するとどのような弊害が生まれるのかについてご紹介します。
サプライチェーンリスクの発生による弊害
サプライチェーンリスクが発生してしまうと、商品や製品の生産が停止してしまうため、新たなビジネスチャンスの喪失や十分な対策を行っていなかったという企業のイメージダウンが起こる可能性があります。
また、製造や物流業界では、企業間提携において納品に関する期限や規則を定めるケースがあるため、サプライチェーンリスクの発生によって期限や規則に反してしまった場合、提携企業先からペナルティを受けてしまう可能性もあります。
さらにサプライチェーンリスクが発生すると、人材が他の業界や企業に流出したり、企業のイメージダウンにより採用活動が難航してしまうなど、人材確保が困難になるケースもあります。加えて、製造や物流のように人の手によって業務が行われる業界では「人材の減少=生産性の減少」を意味することから、企業に長期的な悪影響を与え、株価の下落にも見舞われる恐れがあります。
これらの事態に陥ってしまった場合、企業の業績が大きく悪化し、回復までに長い時間を要することになります。
それでは、サプライチェーンリスクによる悪影響を未然に防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。次章ではサプライチェーンリスク軽減に向けた対策をご紹介します。
サプライチェーンリスク軽減に向けた3つの対策
サプライチェーンリスクの軽減に向けた対策は事前に講じておく必要があります。
対策1:BCP(事業計画書)の策定
BCPとは「事業継続計画」のことであり、災害や事故などの企業におけるリスク発生時に「どのように被害を最小限に抑えて事業の継続や早期の復旧を図るか」の計画を記したマニュアルのことです。
BCPを策定することで、万が一の事態が発生した際にも冷静に対処でき、被害を最小限にとどめるだけでなく、速やかな復旧に繋げやすくなります。
BCP策定は会社の規模を問わず、大手企業から中小企業まで取り入れられています。詳しくは以下記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

ニューノーマル時代に有効なBCP対策とは?
対策2:調達先や拠点の分散化・多様化
リスクを最小限に抑えるための有効な手法として「リスクの分散」が挙げられます。
自然災害の発生によって特定の地点からの供給が途絶しても対応できるように、代替品や原材料などの調達先を複数確保することが重要です。また、国内だけでなく国外にグローバルサプライチェーンを持つ場合は、特定の国だけでなく複数の国に拠点を構えたり、国内にも複数の地域に拠点を構えたりすることでリスクの分散ができます。
また、近年で多く導入されている「テレワーク」も、従業員が非常時にオフィスに通わなくても済むため、リスク分散に繋がります。したがって、事前にテレワークができる環境を整えておくことも1つの有効な手段です。
対策3:サプライヤとの連携強化
ここまでで記述した「BCPの策定」と「調達先や拠点の分散化・多様化」はサプライチェーンリスクを軽減するために非常に重要な対策です。しかし、これらの対策はいずれも大変な手間がかかってしまいます。
そこで効率的に取引先やサプライチェーンを管理し、リスクの見える化を行うことが重要となります。そのためには、サプライヤとの連携を強化し情報収集を充実させ、類似部品の製造が可能なサプライヤを調査することが大切です。
調達先の分散化や多様化、サプライヤとの連携を強化するためにはあらゆる情報の一元管理が重要です。次章では、サプライチェーンリスクを管理するために情報を一元管理する方法についてご紹介します。
サプライチェーンリスク管理のために情報を一元管理しよう
本記事では、サプライチェーンリスクが増大する背景やリスクの顕在化による弊害とその対策についてご紹介してきました。
サプライチェーンリスクの発生が企業に与える影響は大きいため、事前に対策を行うことは非常に重要です。しかし、リスクを分散させるために多様なサプライヤと取引を行うと、情報が分散し業務が滞る可能性があります。また、従来の紙媒体での情報管理では「人為的なミス」、「管理の難易度」、「管理工数の多さ」などさまざまな問題点があるため、情報の一元管理を行うには電子化が重要です。
そこでご紹介するのが「PROCURESUITE」です。
PROCURESUITEは、大興電子通信が提供する調達支援システムであり、見積や発注・承認処理などの購買業務の際に社内の購買・調達部門や発注先を含めた情報の可視化・業務の効率化を実現できます。
見積~検収まですべての調達プロセスの一元管理・見える化を実現することで、サプライヤや取引先の管理支援が可能になり、サプライチェーンリスクを軽減できます。
サプライチェーンのリスクヘッジに貢献するPROCURESUITEの詳細は下記にてご紹介していますので、ぜひご覧ください。