様々な情報がデジタル化し続ける今、購買業務のあり方にも変化が生じています。しかし、時代が変わっても変わらないものもあります。そのヒントを得るために役立つのが、トヨタ自動車の14カ条といわれている「購買係心得帳」。優秀なバイヤー育成を行う上でも有用とされています。
本記事では、その心得の一端を取り上げ、現代のバイヤーに求められるマインドセットを探ります。
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「購買係心得帳」とは? ~トヨタ自動車の14カ条~
まず、「購買係心得帳」について簡単に触れていきましょう。
購買係心得帳とは、トヨタ自動車の創業者であり、2代目社長でもある豊田喜一郎氏(以下、豊田氏)が購買・調達部門に向けて作成した「14カ条の規範」です。この規範は豊田氏が常務だった昭和12年に書かれたもので、社内にはこの戒めを堅く守らせていました。この理由として、購買・調達部門は業者からの誘惑が多く、その業者との癒着が自動車本体の性能・コストにも大きく影響するからだ、と述べています。
そして、この規範は現代の調達・購買業務にも通じる原則論であることが知られています。テクノロジーが台頭する時代であっても、調達・購買業務に臨む上で求められるマインドセットは変わっていないからです。
出典:購買係心得帳 ※14カ条をすべて原文でご覧になりたい方はこちら
http://blog.livedoor.jp/aoki1162201/archives/51172436.html
「購買係心得帳」に学ぶ、優秀なバイヤーのマインド
ここからは、購買係心得帳の一節を抜粋してご紹介していきます。
常に”ベストバイ”を追求している
まず、1つ目はベストバイを追求できているかどうかです。
当然ですが、調達・購買担当者は「品質の良いものを、安いコストで買い入れること」がミッションです。「購買係心得帳」でも、第1条で以下のように述べられています。
<第1条> 受け持ち部品の材料の良否、値段、工作の良否、工賃等を研究し、常に材料の原価及び適切な工賃より計算して、無理のない範囲内で最も安く優秀な部品の買い入れに努力すること。
優秀なバイヤーは、これを日頃から追求するべく努力しています。 ポイントは、ただ安く買い入れることに執着するのではなくて、あくまでも「良いものを、無理のない範囲で安く仕入れる」という発想にあります。
優秀なサプライヤを発掘、複数購買をしている
2つ目は、購買先の選定に対する心構えです。ベストバイの追求には終わりはありません。常に情報収集を続けつつ、複数箇所の購買先を検討し続けることが大切だと述べられています。
<第4条> 購買先の選定には特に注意を払うこと。各方面にアンテナをめぐらし、他に優秀なところがないかどうかを常に研究しておくこと。 1部品に対してはなるべく2ヶ所に注文することを原則とする。 ただし、やむを得ない場合には、部長の許可を得た上で、1ヶ所または3ヶ所とする。 1ヶ所の場合は、出来るだけ早く、他の適切な購買先の選定に努力すること。 3ヶ所以上の場合には、なるべく従来の注文先に迷惑のかからないように特に注意しながら、値段が高く、不良が多いところへの注文を順次減少させていって差し支えない。
この原則は、現代の調達・購買業務にも当てはまります。Web上に多くの情報が出回っている昨今でも、実際に取引をしてみなければ分からないことも多々あります。だからこそ、常に良い条件を提示できる購買先を模索する姿勢が欠かせないのです。
サプライヤと癒着せず、良いパートナーを目指している
3つ目は、サプライヤとの関係構築についてです。この条項では、適切な関係性を維持して初めてベストバイが実現することを示しています。
<第9条> 必要に応じては、注文先を巡視してもよい。 その時には部長にその用件を申し出て許可を受けること。 この際、先方にて昼食を、時間の都合で工場内でよばれることは差し支えないが、高級な料理屋でよばれることは避けること。 夕食は絶対に避けること。 もしやむを得ずよばれてしまった時には、その理由を部長まで書面で出すこと。
<第10条> 購買先からの中元歳暮は出来るだけ断ること。 やむを得ない場合は、それを受け取って部長に提出すること。 また、招待を受けた時には、原則として断ること。 やむを得ない場合は、部長とともに行くか、部長が出席できない時には、部長の許可を得て出席すること。 注文先の人の家庭訪問は絶対に断るようにすること。
注文書は、会社を代表して出すことを意識する
4つ目は、注文書類に関する注意点です。発注者と受注者、という関係の中では不適切な態度を取ってしまうケースがあります。そうしたことがないように自らを戒めるよう、記述されています。
<第12条> 注文先に出す書簡は会社を代表して出すことになるため、会社の対面を損することのないよう出来るだけ丁寧な文句を使用すること。 部長はこの書類を見て不満な場合は書き直させること。 また電話をかける場合も尊大振りな電話の対応をすることを慎むこと。 そのようなつまらないことで先方の感情を害することは、購買係の拙劣であることを示すこととなるため、部長は常に電話のかけ方が悪い場合は注意すること。
時代が変わっても、人対人、組織対組織の関係を築く以上、その根底にあることは変わりません。だからこそ、細かな感情への配慮がベストバイに繋がるのだと感じさせられます。
「作業」から「仕事」にシフトする。IT活用のススメ
購買係心得帳の実際の条文からは、トヨタが世界的な企業として調達・購買にいかに注力していたかが読み取れます。そして、バイヤーがいかに「適正な購買価格の見定め」や「サプライヤの発掘・選定」といったことに目を向け、注力すべきか、その重要性が伝わってくるはずです。
しかし、実態として調達・購買部門には「注文書を書く・処理する」「サプライヤにメールをする」「他部門からの納期問合せに対応する」「製品の検収を行う」など、定型でオペレーショナルな業務が存在していることも確かです。だからこそ現実問題として、攻めの業務に時間を割けずにいます。
こうしたオペレーショナルなパーチェシング業務(購買業務における事務処理など)は可能な限りシステムに委ね、システムでは代替できない購買業務に担当者が注力できる仕組みづくりこそが重要だといえます。そのためにも、ITシステムを活用することがポイントになります。
大興電子通信が提供する購買管理システム「PROCURESUITE(プロキュアスイート)」は、パーチェシング業務を省力化、効率化するための機能を多数備えた仕組みです。例えば、各拠点の購買データを一元化することで、発注書など書面がなくても購買情報の共有も可能になります。また、全社共通のカタログからの購入を推進することで、購買業務にかかる業務負荷自体を減らすこともできます。
優秀なバイヤー育成のためにパーチェシング業務の効率化を図るためにも、PROCURESUITEの活用を是非ご検討ください。
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