購買管理

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インボイス制度~仕入税額控除の経過措置と免税事業者との調整について

いよいよ始まったインボイス制度ですが、経過措置として免税事業者からの課税仕入れについても2026年9月末まで80%、2029年9月末まで50%の仕入税額控除が可能です。本記事では、仕入税額控除についての経過措置の内容と、免税事業者にとどまっている仕入先・購買先との調整と注意点について解説します。

インボイス制度のおさらい

消費税の基本的な考え方(原則課税方式)は、事業者が売上に伴う仮受消費税と、仕入れ購買に伴う仮払消費税(仕入税額控除)の差額を納付するというものです。
インボイス制度のポイントは、「適格請求書発行事業者」として登録した課税事業者から、仕入れ購買と消費税についての証憑(しょうひょう)として適格請求書(インボイス)を発行してもらわないと、仮払消費税(仕入税額控除)の計上が認められないという点です。

つまり、「適格請求書発行事業者」ではない免税事業者等からの仕入れや購買が多い事業者は、インボイス制度により消費税の負担が増え、利益を圧迫することになります。

仕入税額控除の経過措置と適用要件

上述の内容が2023年10月1日に一挙にスタートすると、仕入調達先に免税事業者が多い事業者では利益の圧迫が厳しく、また、多くの免税事業者が課税事業者との取引を打ち切られることが懸念されました。
このような背景から、インボイス制度では免税事業者からの課税仕入れについても2026年9月末まで80%、2029年9月末まで50%の仕入税額控除が可能とする経過措置が講じられています。

なお、この経過措置による仕入税額控除の適用を受けるためには、次の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となります。

帳簿

  1. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  2. 課税仕入れを行った年月日
  3. 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)及び経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
  4. 課税仕入れに係る支払対価の額

請求書等

  1. 書類の作成者の氏名又は名称
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  4. 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
  5. 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

参考:国税庁Q&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-15.pdf

免税事業者→課税事業者への転換情勢

2022年9月に公表された、日本商工会議所による“「消費税インボイス制度」と「バックオフィス業務のデジタル化」等に関する実態調査結果“によると、
約65%の課税事業者が取引先の免税事業者に対し、「インボイス発行事業者になるよう要請する」方針と回答する一方、
免税事業者の約3割は「課税事業者になる予定」、約2割は「要請があれば課税事業者になる予定」と回答していました。

2023年10月時点での詳細の状況は不明ですが、この間、実際のインボイス制度スタートに向けて、半数程度はインボイス発行可能な課税事業者に転換していると想定されます。

参考:2022年9月 8日 日本商工会議所 「消費税インボイス制度」と「バックオフィス業務のデジタル化」等に関する実態調査結果について
https://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2022/0908110000.html

独禁法、下請法に抵触しないように注意を

以上から、インボイス制度スタート時点で免税事業者にとどまっている仕入先・購買先へのインボイス発行事業者への転換要請の土壌は整っていると考えられますので、利益流失防止の観点から引き続き積極的に取り組みたい事項となります。

ただし、その調整や交渉において、独禁法、下請法に抵触しないようくれぐれも注意してください。

独禁法、下請法に抵触するおそれがあるケースの例

  1.  取引価格の引き下げ … 免税事業者にとどまる仕入先に対して、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合
  2. 商品・役務の成果物の受領拒否、返品 … 免税事業者にとどまる仕入先からの、契約済の商品や役務の受領を拒否した場合
  3. 協賛金等の負担の要請等 … 免税事業者にとどまる仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、取引の相手方に別途、協賛金、販売促進費等の名目での金銭の負担を要請した場合
  4. 購入・利用強制 … 免税事業者にとどまる仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、当該取引に係る商品・役務以外の商品・役務の購入を要請した場合
  5. 取引の停止 … インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対して、一方的に取引を停止した場合
  6. 登録事業者となるような慫慂等 … 免税事業者である仕入先に対して、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告した場合

参考:公正取引委員会 インボイス制度関連コーナー
https://www.jftc.go.jp/invoice/

まとめ

以上、本記事では、インボイス開始後の経過措置としての仕入税額控除の内容と免税事業者である仕入先・購買先との調整や注意点について解説しました。

なお、大興電子通信が提供する購買管理ソリューション「PROCURESUITE」は、下請法該当事業者をマスタ管理し、発注や検収を処理する際のアラート機能などを備えています。
また、当社で提案可能な各種の会計システムと連携させることで、「適格請求書発行事業者」から仕入れ分の通常の仕入税額控除計算と、免税事業者から仕入れ分の、経過措置期間ごとの仕入税額控除計算に対応することが可能です。

当社取り扱い会計ソリューション例
GLOVIA きらら 
SuperStream-NX 
・ProActive

もちろん、すでにお使いの会計システムとも個別に連携をカスタマイズできる可能性もありますので、ぜひお気軽にご相談ください。

インボイス制度下における購買管理を強力に支援する「PROCURESUITE」の詳細は、以下のリンクから詳しい資料がダウンロードできますので、ぜひご覧ください。

 

三上 哲章
この記事を監修した人
SMB向け業務システムのセールスエンジニアとしてキャリアをスタート。
400社以上の企業さまの販売管理・会計・給与システム導入に関与。
その後、さまざまなBtoB向けソリューションの企画・販促に携わり、SEO、MEOにも精通。
多くの企業さまの課題とその解決策をわかりやすくご紹介します。
大興電子通信株式会社
ビジネスクエスト本部
マーケティング推進部
マーケティング企画課
三上 哲章

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