損益計算書は一定期間の会社の収益と、それに対する費用、収益から費用を差し引いた利益(または損失)が把握できる資料で、事業状況の把握や改善検討を行うために有益です。本記事では、損益計算書の一般的な読み解き方をご紹介します。
損益計算書の概要と構成
株式会社および合同会社は、会社法により各事業年度の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表の4つの計算書類を作成する必要があります。
このうち損益計算書(Profit and Loss Statement.略してP/L)は、その会社の収益と費用の損益計算をまとめた書類で、以下の構成で作成されます。
損益計算書の構成
項目 | 説明 | |
A | 売上高 | 会社の本業としての商品やサービスの販売によって得られた収益 |
B | 売上原価 | 商品やサービスの製造や、材料の仕入れにかかった費用 |
C | 売上総利益 | A-Bの額。いわゆる粗利益 |
D | 販売費および一般管理費 | 商品やサービスに直接対応しない費用。例えば、給与、オフィス家賃、通信費、広告費などが該当 |
E | 営業利益 | C-Dの額。その会社の本業による採算状況を示す |
F | 営業外収益 | 本業以外の活動で経常的に得ている収益。例えば、受取利息、子会社からの配当金、自社ビルの空きフロアを貸し出している場合の賃料などが該当 |
G | 営業外費用 | 本業以外の活動で経常的に発生している費用。例えば、支払利息、為替差損などが該当 |
H | 経常利益 | E+F-Gの額。その会社の本業に、本業外の活動を加味した、経常的な活動による採算状況を示す |
I | 特別利益 | 本業以外の活動で臨時的に発生した利益。例えば、固定資産売却益や投資有価証券売却益が該当 |
J | 特別損失 | 本業以外の活動で臨時的に発生した損失。例えば、風水害や盗難による損失、固定資産の売却損などが該当 |
K | 税引前当期純利益 | H+I-Jの額。経常的な活動に加えて、一時的、臨時的な要因も含めた採算状況を示す |
L | 法人税等 | 法人税、法人住民税、法人事業税等の合算額 |
M | 当期純利益 | K-Lの額 |
損益計算書のA~Mまでの項目を俯瞰すると、大きく3つのくくりに分けて捉えることができます。
・A~E … 本業の採算状況
・F~G … 本業以外の経常的な採算状況
・I~J … 本業以外の臨時的な採算状況
したがって、本業の状況を把握する場合には、主にA~Eを見ていきます。
推移を確認しよう
会社の本業の状況の中期的な動向を捉えようとした場合、単年度の損益計算書だけでは読み解くことは難しいので、直近3~5年程度の損益計算書から、売上と営業利益の推移を確認することが有効です。
傾向 | 想定される事業状況の例 |
増収増益 | ・競争力のある商品やサービスの販売が拡大している ・外部環境の著しい追い風 |
増収減益 | ・商品やサービスについて積極的なシェアの拡大を志向している ・積極的な商品開発や広告投資が行われている ・M&Aなどにより業容が急拡大している |
減収増益 | ・事業が成熟から衰退期に移行しつつある ・事業構造の大胆な転換が行われている |
減収減益 | ・商品やサービスについてシェアが低下しつつある ・強力な代替商品、サービスの登場による斜陽産業化 ・外部環境が著しく厳しい |
※本表における「増益」「減益」は、営業利益の増減傾向を指しています
※「想定される事業状況の例」は、あくまで例示であり、すべてのケースが当てはまるわけではありません
内訳を掘り下げよう
以上により損益計算書で、その会社の中期的な全体傾向を考察することができます。そして、売上と営業利益の増減理由の詳細を把握するためには、セグメント別や商品別の状況、「売上原価」や「販売費および一般管理費」の内訳を掘り下げる必要があります。
損益計算書上の項目 | 内訳である変動要因の例示 |
売上 | ・セグメント別、商品別の事業状況 ・粗利ミックスの変化 ・需給バランスの変化(数量と単価) |
売上原価 | ・原材料費 ・労務費 ・経費 |
販売費 | ・広告宣伝費 ・販売手数料 ・接待交通費 ・荷造運賃 |
一般管理費 | ・役員報酬 ・給与賃金、福利厚生費 ・支払家賃 ・水道光熱費 ・通信費 ・支払手数料 ・減価償却費 ・租税公課 |
管理会計の高度化を進めよう
損益計算書は会社法などにより作成が義務付けられている財務会計に基づく計算書類であり、その観点からの作成は、決算日から2か月以内に正確を期して作成されます。
一方で、素晴らしい内容が記載された損益計算書の実現を目指すというビジネスの観点では、損益計算書の変動要因の中でも、特に全体への影響度が大きいものを抽出して、管理会計のアプローチにより、その変化を可能な限りリアルタイムに近い形でモニタリング、コントロールする必要があります。
これに対応する形で昨今のERPシステムは、モバイル端末の普及や、IoTセンシング技術の発達を取り込みながら、製造業であれば生産設備の稼働率、物流業であれば積載率など、いままでは把握が難しかったデータについても一元的にリアルタイム管理できるようになりつつあります。
また、相当規模の企業では、グループ会社会計の一元管理により、グループ内リソース配分の最適化を図る必要があります。この点についても、ERPシステムはクラウドや通信技術を取り込む形で進化しています。
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