リース会計基準は、2026年に改正予定であり、この変更により行うべき準備がいくつか存在します。本記事では、リース会計基準の基礎知識から、2026年の改正の変更点や企業への影響、企業が行うべき準備まで網羅的に解説します。
リース会計基準について詳しく知りたい方は、ぜひお役立てください。
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リース会計基準とは
リース会計基準とは、企業がリース(中長期的に商品や機器・設備など高額な固定資産を賃貸すること)を利用する場合の会計基準のことです。
日本の会計基準は、EU加盟国を中心に世界的に採用されている国際会計基準:IFRS(International Financial Reporting Standards)と、アメリカの会計基準を参考に作成されています。
リース会計基準では、リース取引は「ファイナンスリース取引」と「オペレーティングリース取引」の2種類に分けられています。
「ファイナンスリース取引」とは、リース契約に基づくリース期間において当該契約を中途解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引のことを指します。
また、リース期間に生じた修繕費などのコストは借り手側が負担する必要があります。
「オペレーティングリース取引」とは、ファイナンスリース取引以外のリース取引を指し、契約内容にもよりますが、中途解約できたりリース対象物件の修理・メンテナンスをリース会社が対応してくれたりします。
リース会計基準の変遷
日本では、リース会計基準が初めて適用されたのは1993年6月でした。
その後、リース取引に関する会計基準は3回にわたって見直し・修正が行われています。
■2007年3月
リースを利用する企業が増加したことや、EU加盟国で上場企業に適用が義務付けられている国際会計基準:IFRSが世界的に広まっていったことなどを背景に、2007年3月30日に企業会計基準委員会(ASBJ)から「リース取引に関する会計基準」が発表されました。
これにより、所有権移転外ファイナンスリース取引の「賃貸借処理」が原則廃止となり、オンバランス処理(貸借対照表に費用の計上が必要)することが義務付けられました。
■2009年6月
金融庁から、企業会計審議会 企画調整部会の「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」が公表されました。
こちらは、2009年2月4日に公表された中間報告(案)に対して、2009年4月6日までの期間に広く意見の募集を行い、取りまとめたものとなります。
この報告では、国際的に事業活動を行っている上場企業については、連結財務諸表に「IFRSを任意適用するのが適当」という指針が出されます。
出典:金融庁ウェブサイト「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」の公表について」
■2023年5月
企業会計基準委員会(ASBJ)から、「リースに関する会計基準(案)」が公表されました。この案ではすべてのリースを原則としてオンバランス処理(売買処理)することが方針として出され、前述の国際会計基準:IFRSに近い形となりました。
リース会計基準の改正予定について(2026年予定)
ここからは、2026年に予定している改正について詳しく解説します。
改正予定と現状
リース会計基準の改正案は、このまま順調に進めば2026年4月1日からの適用開始となる予定です。ただ現時点では改正の内容はまだ確定しておらず、2023年5月〜8月に募集されていたコメントを反映して内容が最終化される見込みです。
改正の目的
2026年の改正における一番の目的は、日本の会計基準を国際会計基準:IFRSやアメリカの会計基準に対して合わせていくことです。
海外の基準に合わせる理由ですが、例えば今の日本企業の決算書を海外投資家が読んだとしても、会計基準が違う部分があり分析が難しくなるという課題が考えられます。
世界的にも採用されているそれらの基準に合わせれば、海外の投資家が日本の企業にも投資しやすくなります。
改正による変更点
リース会計基準の改正による主な変更点は、以下の2つです。
①オペレーティングリースについても、資産・負債の計上が求められる
オペレーティングリースの対象物品は、これまで「賃借料」「リース料」としてリース料の支払いごとに費用計上するだけでした。しかし、改正後は賃貸借契約やリース契約を使用権資産、リース債務として貸借対照表に計上することになります。
②ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引が区別されなくなる
これにより、ファイナンスリース取引・オペレーティング取引、どちらも原則としてオンバランスでの会計処理に統一されるため、これまでのような区別がなくなります。
③ リース期間の算出方法が変わる
今までは契約書に記載がされた契約期間を対象とし、後から期間を変更できなかったものの、改正後は延長や解約を踏まえたうえでリース期間を測定することができるようになります。これにより、会計処理で考慮すべき項目が多くなります。
リース会計基準の改正による企業への影響
リース会計基準の改正により、特に影響が大きいと考えられるのは、以下2点です。
経費処理の負担増加
改正後は、契約時点での使用権資産・リース資産をバランスシートに計上することになります。リース料を支払うたびに「減価償却費」「支払利息」を区別して処理することになるため、従来と比べて仕訳パターンが膨らみます。
目安としては、仕訳パターンが改正前の3~4倍程度に増大することが考えられるので、経理担当者が従来通り処理をしきれるかどうかの検討が必要です。リースの利用数や、利用部門が多くなるほど企業の負担は大きくなり、ミスも発生しやすくなります。
こうした影響から、経費処理が煩雑化しても対応工数が大きくなりすぎないよう、従来以上に財務管理・会計システムの活用がおすすめです。
各種税法への対応
リース会計基準が改正された場合、改正内容に合わせて各種税法も変わる可能性がありますが、万が一各酒税法が改正されない場合、新しいリース会計基準と各種税法の差分について対応を行う必要が出てきます。
自己資本比率の低下
改正後は、従来計上しなかった資産・負債が追加されることになるため、総資産が増えても純資産は変動しない、というケースが発生し自己資本比率の低下につながることが考えられます。
こういった企業への影響を最小限にとどめるために、改正前に準備を整えておくとよいでしょう。では、具体的にどのような準備を行うべきか、次章で説明します。
リース会計基準の改正にむけて行うべき準備
リース会計基準の改正にむけて、企業が準備するべきことは大きく4つのステップにわけられます。
①影響分析
まずは、改正によって影響を受ける範囲の洗い出しです。
改正後、新たに資産・負債が計上される可能性がある賃貸借契約・リース契約の契約書を確認し、影響対象を整理しましょう。
前述の通り、改正後は原則としてすべてのリース取引がオンバランスでの会計処理に統一されます。その場合、経理処理にどの程度の影響が出るのか見積もっておくことも重要です。
また、不動産賃貸借取引もリース取引としてみなされる可能性もあります。
②対応方針の検討
改正後、新しいリース会計基準が適用されたら社内でどのように対応をしていくのか方針を決めておかねばなりません。
前述の通り、仕訳パターンが改正前の3~4倍程度に増大することが考えられるので、経理担当者が従来通り処理をしきれるかどうか、難しいのであれば人員増強や業務フローの見直しを行うことも考えなければなりません。
煩雑化する経理処理を少しでも抑えるべく、改正後の処理に適応できる財務管理・会計システムの導入を検討することも手段の1つとして挙げられます。
③関係各所との調整・規定改訂
対応方針の最終決定・運用開始にむけて、社内の関係者や経営・役員陣に調整・報告を行う必要が出てきます。
また、財務管理・会計システムを導入する場合はシステムの提供企業の選定やその企業と連携して導入フロー・スケジュールの調整を進めるなど、各所との調整を行いましょう。
④業務設計・システム導入
改正後は具体的にどのようにして経理処理を行っていくのか、対応方針を踏まえた新しい業務設計をしていきます。
新たに財務管理・会計システムなどの導入を進める場合は、システムの提供企業と運用にむけての説明・オンボーディングなどを進め、システム導入を実施します。
改正に向けて、早めの準備・検討がおすすめ
ここまでで改正に向けての対応準備について説明してきましたが、影響範囲の特定、人員増強・業務フローの再設計、対応するシステムの導入など、いずれの準備内容も一定の時間を要する内容ばかりです。
また、関係各所との方針の調整や、経営・役員陣に対して稟議・承認を得たりすることを考えると、改正にむけての対応は一定の中長期プロジェクトとなると捉え、早めに対応準備を進めておくことをおすすめします。システムを導入する場合は、情報セキュリティ部門やセキュリティ部門の審査にも時間を要するため、より一層早めの着手が重要です。
準備内容のなかでも特に新しい業務設計・システム導入には時間を要するため、信頼できるパートナー企業をみつけて相談しながら、やるべきことの洗い出し・どう進めるかなどを早めに組み立てていくことをおすすめします。
弊社でも、改正後の新リース会計基準に適応した財務管理・会計システムのご提供と、その導入サポートが可能です。ご相談いただけましたら、各社のご状況に合わせて最適なシステム・サービスをご提案させていただきますので、ぜひ以下を参考にご相談くださいませ。