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ERPとは?基幹システムとの違いや導入メリットをご紹介

ERP

「基幹システム」と同義語のように扱われることが多いのが、ERPです。ERPは基幹システムとは異なったものであり、特徴を理解し導入することで企業の成長角度を高めることができます。

今回は、ERPの概要や基幹システムとの違い、ERPを導入するメリット、ERPの種類、ERPの導入形態などについてご紹介します。

ERPとは?

ERPとは?

ERP(Enterprise Resource Planning)は「企業資源計画」を意味する言葉で、企業が持つあらゆる資源を一元管理し、業務効率化や経営判断の加速化を目指すシステムです。

ERPでは部門ごとに運用していた各システムを統合し、一元管理することでスムーズなワークフローの構築を実現します。また、すべての情報を一つのシステムで管理できるため、経営陣はデータに基づいた正確で速い判断が下せるようになります。

ERPと基幹システムの違い

ERPは「統合基幹業務システム」と呼ばれることもありますが、単に「基幹システム」といった場合とは意味が異なります
基幹システムは企業の業務の基幹、つまり中核を担うシステムを意味し、部門ごとの業務の効率化を目的としています。具体的には、以下のようなシステムが挙げられます。

  • 販売管理システム
  • 生産管理システム
  • 在庫・購買管理システム
  • 人事給与システム
  • 顧客管理システム  …など

これらは企業の業務に欠かせないシステムですが、それぞれは独立して運用するシステムです。ERPはこれらの基幹システムの機能を統合して使用するシステムのことで、基幹システムとは区別して扱われます
基幹システムの詳細については下記記事からご覧ください。

ERPを利用する3つのメリット

ERPを導入することで、以下の3つのメリットが得られます。

経営状態の可視化

ERPのEPは「企業資源」を指し、資源には資金や資材、人材、設備、社内にあるあらゆる情報、物流の流れなどが含まれます。ERPのシステムではこれら企業資源の情報を一つのデータベースにまとめることで、各資源の現在の情報をいつでも引き出せるようになっています

これは経営陣にとって大きなメリットとなります。経営状態を可視化して経営判断に必要な情報をすぐさま取得できるため、素早く正確な判断を下すことが可能だからです。社会のIT化やグローバル化が急速に進む現代において経営のスピードは重要であり、社会の流れに置いていかれないためにもERPには大きなメリットがあると言えます。

業務効率化

会計システムや販売管理システム、在庫管理システムなどは仕様が違うなどの背景から別々に運用されることが多く、非効率な面もあります。これらの基幹システムをERPで統合管理することで、業務を大幅に効率化することが可能です

ERPでは一つのデータベースを使用するため各部門で持っている情報が違うなどの齟齬は起こらず、どの部門からも同じ情報を引き出せます。また、部門ごとに依存せずに業務フローを整えることができるので、業務の一連の流れにおいて無駄を省くことができます

リアルタイムな情報共有

一つのデータベースを使用するということは、あるシステムで情報を更新すると、他のシステムにもリアルタイムに反映されるということです。

例えば、購買管理システムに入力した購買情報はすぐさま会計システムにも反映され、何を購入したのかを会計担当が再入力する必要はありません。また、在庫管理システムにも反映され、どの倉庫にどれだけの資材や商品の在庫があるのかを正確に把握できます。生産管理システムとひも付ければ、進捗状況をリアルタイムに把握し、足りない材料や部品をすぐさま調達することも可能です。

ERPにおける注意点

メリットをもたらしてくれる一方、ERP導入には注意も必要です。

成果を出すには、自社に合ったERP選びが非常に重要です。しかし、ERPの種類は多岐にわたり、自社に合ったシステムを選びは非常に難しい作業です。
また、社員に定着までに時間がかかります。自社に合わないERPの導入や、導入後の適切な教育をしていかなければ、逆に社内で不満の声が増えたり、問い合わせに追われたりすることになるでしょう。
さらに、ERPは導入・保守費用で大きくコストがかかります。数百万円程度は初期費用として必要ですし、導入後にもライセンス費用や保守費用、バージョンアップなどに費用がかかる場合があります。

ERP導入の際には、上記のような注意点があることを認識した上で、自社に合ったシステムを慎重に選びましょう。

ERPの種類

自社に適したERPを選ぶには、ERPの種類を把握しておくことが重要です。

  統合型 パッケージ型 フルスクラッチ型 コンポーネント型 業務システム型
特徴 別々のシステムで管理していたデータベースを一つに統合 市販されている既製品のERPソフトウェア製品 企業の特定のニーズに合わせてゼロから開発 既存の各システムを部品化し、中心に入って管理 一部のシステムを統合して管理
メリット 経営判断のスピードアップが見込める 導入は比較的容易。ある程度のカスタマイズが可能 企業独自の要件に対応できる 導入コストが低い。拡張性も高い 導入コストが低い。すぐにすべてのシステムを刷新しなくていい
デメリット 大規模な刷新が必要 スクラッチ型に比べてカスタマイズ性は低い 開発に時間とコストがかかり、メンテナンスも複雑    

統合型ERP

統合型ERPはこれまでご紹介してきたERPそのもので、別々のシステムで管理していた別々のデータベースを一つに統合します。大規模な刷新が必要となりますが、経営判断の大幅なスピードアップが見込めます。

パッケージ型ERP

パッケージ型ERPは、市販されている既製品のERPソフトウェア製品です。このタイプのERPは、一般的に必要な機能があらかじめ組み込まれており、多くの企業の基本的な要件を満たすように設計されています。
導入は比較的容易で、ある程度のカスタマイズが可能ですが、次にご紹介するスクラッチ型ERPに比べるとカスタマイズの範囲には限界があります。そのため、製品の仕様に合わせて業務フローを変更する必要が生じることもありますが、開発時間やコストの削減、信頼性の高いソフトウェアの利用が可能です。

フルスクラッチ型ERP

スクラッチ型ERPは、企業の特定のニーズに合わせてゼロから開発されるシステムです。企業の独自の業務プロセスや要件に完全に合致するようにカスタマイズされ、高度な柔軟性と完全なカスタマイズが可能です。しかし、開発に時間とコストがかかり、メンテナンスも複雑になる可能性があります。そのため、大企業が採用する傾向にあります。
主な利点は、企業の独自の要件に完璧に対応できる点にあります。

コンポーネント型ERP

コンポーネント型ERPは、既存の各システムをコンポーネント(部品)化し、中心に入って管理を行うことで業務効率化を目指します。既存システムをそのまま使えるため導入コストが低く、拡張性も高いというメリットがあります。

業務システム型ERP

業務システム型ERPは、企業の業務すべてを一元管理するのではなく、一部のシステムを統合して管理を行います。導入コストが低く、すぐすべてのシステムを刷新しなくていい点にメリットがあります。 

ここまでご紹介したように、ERPは部門や業務ごとに分断されたシステムを使用することの非効率性を解消し、企業の情報資産を有効に活用することを目的としています。ERPの導入を検討している企業は、それぞれの特徴を理解し、自社の要件に最適な選択を行うことが重要です。

ERPの提供形式

ERPの導入形態には、大きく分けて「オンプレミス型」「クラウド型」「ハイブリット型」の3種類があります。

オンプレミス型

オンプレミス型とは、自社サーバにシステム構築をする形態のことです。カスタマイズの自由度は高いですが、初期費用が高額で導入までの時間もかかります。アップデートやパッチ適用が自動的に行われないため、自社でバージョンアップや管理を行う必要もあります。
主に、大規模環境での長期利用を考えている企業に向いています。

クラウド型

クラウド型は自社でのサーバ設置やシステム構築が不要なため、初期費用が安価で導入までの時間もかかりません。ただし利用人数ごとに月額または年額課金制となっていることが多いため、利用者の数や利用期間によっては費用が高額になることもあります。

ハイブリッド型

ハイブリッド型は、クラウド型とオンプレミス型のいいとこ取りをしたERPです。専有と共有どちらの良さも生かすべく、プライベートクラウドとオンプレミスの両者を組み合わせるなど、複数のERPを使用します。

2023年に株式会社矢野経済研究所が発表した日本におけるERP市場動向に関する調査によれば、2022年のERPパッケージライセンス市場は前年比10.9%増の約1,406億円という結果が出ており、2023年におけるERPパッケージライセンス市場予測でも、前年比11.5%増の1,568億1,000万円に達すると予測されています。

なお、オンプレミス型が中心であった生産管理システムなどの、パッケージ型等の導入が進み、クラウドERPを利用する企業が増加し続けているという特徴もあります。

出典:(株)矢野経済研究所「ERP市場動向に関する調査(2023年)」(2023年12月13日発表)
注1.ERPパッケージベンダーのライセンス売上高(クラウドのサブスクリプション売上高を含む)を、エンドユーザ渡し価格ベースで算出した。
注2.2023年以降は予測値

ERP導入の流れ

スムーズなEPR導入を実現するために、ERP導入の基本的な流れについて解説します。

ERP導入の流れ

1.計画
導入の最初のステップは、ERPを導入する目的を明確にすることです。どのような課題を解決したいのかを決定し、それに基づいて必要な機能を特定します。この明確な目的は、ERP選定の指針となるだけでなく、社員への導入目的の説明にも役立ちます。

2.プロジェクト推進者の選定
ERPプロジェクトは社内の多岐にわたる業務に影響を及ぼすため、2人以上の推進者を選ぶことが重要です。なお、適切な推進者は、部署間をまたいで発言できる経営層に近い役職者が挙げられます。次に各部署の責任者を選び、プロジェクトを進めるための打ち合わせを行います。

3.業務プロセスの棚卸
ERP導入に伴う業務プロセスを見直し、現在どのようなツールや方法で管理されているかを確認します。業務は各企業固有のものなので、基本的には社内で棚卸をする必要があります。

4.業務フローの構築
棚卸した業務内容を基に、ERPでカバーできる範囲を定め、新しい業務フローを構築します。

5.ERPの試験運用
導入されたERPシステムの試験運用を行い、実際の業務環境での機能やパフォーマンスを確認します。この段階では、従来のシステムと併用しながら問題点を洗い出します。

6.本格運用の開始
試験運用での問題点が解決されれば、ERPの本格運用に移行します。社内全体に向けたマニュアル作成や、状況に応じた機能調整を行いながら、システムを運用していきます。

この流れを踏まえることで、ERP導入はスムーズに進行し、企業の業務効率化や情報管理の向上に大きく寄与することが期待されます。

ERPの選び方

自社業務に適したERPを選ぶには、以下のポイントを考慮することが重要です。

  • 自社業務との適合性の高さ
    ERPが企業の特定のニーズや業務フローにどれだけ適合しているかを評価します。
  • カスタマイズ性(柔軟性)の高さ
    システムが企業の特定の要件に合わせてカスタマイズ可能かどうかを確認します。
  • ライセンス提供方法
    サブスクリプション型、オンプレミス型など、自社に最適なライセンス形態を選択します。
  • 現場での使いやすさ
    実際の業務において従業員が容易に操作できるかどうかを検討します。
  • サポートと保守運用
    導入時や継続的な運用におけるサポート体制の充実度を確認します。
  • セキュリティレベル
    データの安全性やシステムのセキュリティ対策を評価します。
  • 導入実績
    他の企業における導入事例や成功例を参考にしましょう。

これらの要素を考慮することで、業務効率化やコスト削減を目指した適切なERP選定が可能となります。

課題に合わせてERPを導入しよう

ERPで各システムの情報を一元管理することで、経営や業務に大きなインパクトを与えることができます。しかし、既存のシステムを廃して新しいシステムを敷くとなるとコストや手間が大きくかかることもあるため、企業の規模や現在運用しているシステムの状況、抱えている課題に合わせ、入念に計画したうえで最適なシステムを導入することが大切です。
特に上場企業は、2023年度から非財務情報開示が義務付けられたため、効率的な集計管理ができるERPシステムの導入は効果的と言えます。

大興電子通信が提供する統合業務ソリューション「GROVIA iZ」では、「経営」「会計」「人事給与」「就業」「販売」 「貿易」 「生産」の7つの業務における全社の情報を一元化し、経営に貢献するERPシステムを提供しています。

オンプレミスとクラウドを混在できるハイブリッド環境で、環境に依存せずシステムを最適化できるだけでなく、また、モバイル端末やさまざまなコミュニケーション機能を利用して、場所や時間、従来の業務フローにとらわれず、生産性を向上することが可能です。

統合業務ソリューション「GROVIA iZ」については、以下からご確認ください。


GLOVIA iZの詳細はこちら

製品詳細


 

寺本 仁
この記事を監修した人
会計・人事給与システムのソフト開発会社にてキャリアをスタート。
システム導入支援に従事後、営業部門に転じ、システム活用事例や課題解決事例に立脚した顧客提案を推進。
大興電子通信に入社後は、勤怠管理や連結会計、経理部門のDX化など、ERPソリューション全般に精通したスペシャリストとして活躍中。
大興電子通信株式会社
ビジネスクエスト本部
インダストリー推進部
業務ソリューション課
寺本 仁

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